第1話 #18「後悔するなら…」
「アンタには大きな借りが出来たわね。この礼はまた後日返させてもらうわ」
有紗は俺に感謝の言葉を述べた。まあ、俺は大した事してないけど。
「イヤ、いいよ。それよりも死なずにすんで良かったよ」
そう言いながらも心の中では1度見捨ててしまった罪悪感はまだ残っている。しばらくはこの罪悪感が残ったまま過ごさなければいけない。
「あっ、そう言えば…」
「??」
ふと『礼』と言われてアレの事を思い出して鞄からあの時渡された茶色の封筒を取り出した。色々あったせいで結局中身を見ないまま入れて置いた。
「ああ、それね。別に返さなくていいわよ」
どうやら俺の考えが見透かされていた。有紗に封筒を渡そうとしたがそれを断った。
「それはアンタにあげた奴だから好きに使っていいわよ」
そう言われると段々中身が気になってきた。俺は恐る恐る封筒を開けてみた。茶封筒に入れるものとしては現金とかが無難だろうがまさかそんな訳ないよな。
「……」
封筒の中身をみて言葉が出てこなかった。中身は現金だった。フラグを立ててしまった俺も悪いが、問題はそこではない。
茶封筒の中は福沢諭吉で一杯だった!
数を数えてみると、諭吉が50枚、つまり50万入っていたのだ。
「ご、ご、ご、ごじゅ、ご、ご、ご…」
言葉が喉に詰まる。それを見ていた有紗はまたクスクスと笑った。
「アンタ、慌て過ぎでしょう。これぐらい大したことないわよ」
イヤイヤイヤイヤイヤ! こっちからしたら大したことありまくりですわよ。俺、ひょっとして50万持って学校行ってたワケ? そう考えたらゾッとしたわ!!
大体、大人でもこんな大金持ち歩いてないぞ! 大きな買い物する時ぐらいだろ!
「まさか、いつもこんだけ持ち歩いてんのか?」
確認の為、有紗に訪ねてみた。
「まあ、そんだけ持ってたら困らないでしょう?」
「イヤ、馬鹿か!」
思わずツッコんでしまった。女子とこんなやりとりをしたのは生まれて始めてだ。彼女はどこか抜けているからつい言いたくなってしまう。
---それから大金の持ち歩きについて話あった後、話は今後の行動についてに話あった。
「これからどうするつもり何だよ?」
今回は運良く俺の家の近くだったから何とかバレずに済んだものの奥田はまだこの近くで探し回っているだろう。今日はやり過ごせても明日はどうする?
「そうね、あいつらを早く何とかしないといけないし今日中にでもケリをつけないと…っつ!!」
まだ体が本調子じゃないのに馬鹿な事いいやがって。だけど、確かにこのままかくまってる訳にはいかない。
だが、ここまでして今さら力にならない訳にもいかない。
「それなら…」
俺は決意した。どっちでも後悔するんだったら俺は…
「俺も一緒に戦うよ!」
カッコよく後悔してやる!
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