サーバルとセーバルは…ズッ友だよ!!

こんぶ煮たらこ

サーバルとセーバルは…ズッ友だよ!!

「アレハウズシオダネ」















ごこくちほーに向かう途中、かばんちゃんの右手で突然ボスがそう言ったの。




「渦潮?」

「ウズシオハカイスイガウズヲマキナガラハゲシクナガレルゲンショウノコトデ、オモニシオノミチヒキノサガハゲシイセマイカイキョウデハッセイスルウズノコトダヨ(訳:渦潮は海水が渦を巻きながら激しく流れる現象の事で、主に潮の満ち引きの差が激しい狭い海峡で発生する渦の事だよ)」

「何かちゃんと分からなかったけど凄そうだね!」

「あのー…それって巻き込まれたらまずいんじゃ…」

「マキコマレタライッカンノオワリダヨ。ウカイスルネ」

「と言うかもう既に引き寄せられてるような…」

「ボスー!!」

『アワワワワ…』




もー!ボスったらまた肝心な時にブルブル震えてる。

あっ大変!一緒についてきてくれたアライさんとフェネックもあたふたしてるよ!




「何なのだこれ!?操縦が効かないのだ!」

「アライさーんまたやってしまったねぇ」

「フェネックぅ!?アライさんは何もやってないのだ!」

「ヤバいよヤバいよ!巻き込まれちゃう!」

「「「「「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

























「ん…ここは…」









あいたたた…。

ここはどこだろう…。

私…どうして………そうだ!

確かうずしお?に巻き込まれてそれで…







「…皆は!?」




周りを見渡してみたけど海と砂と向こうにちょっと林があるくらいで誰もいないや…。

どうしよう…かばんちゃん達は大丈夫かな。

とにかく皆を探さないと!











「あれ…あそこに誰かいる…おーい!!」



良かった!このちほーにもフレンズはいるみたい。

とりあえずこの子に聞いてみよう。




「ねぇねぇ!この辺でこういう帽子を被った子見なかった?」

「…」





あれ?聞こえなかったのかな?

うーん…後ろ向いてて顔は見えないけどおっきな耳だなぁ…私と同じ猫科のフレンズかな?



「おーい!あなたに聞いてるんだけど…」

「…ナニ」クルッ














…え?













「私がもうひとりいるーーーーーー!?!!?!?」




















「突然叫んじゃってごめんね。あなた私とそっくりなフレンズだけどもしかしてあなたもサーバルキャットのフレンズ?」

「…フレンズ?」



同じ種類のフレンズが生まれる事もあるっていうのは聞いてたけど本当に会ったのは初めてだよ…自分がふたりいるみたいで何か不思議な気分…。

でもこんな事前にもあったような…。



「…そうだ思い出した!もしかしてあなたミライさんといたもうひとりのサーバルだね!?色も声もそっくりだし!」

「………。チガウ」

「えぇ~!?じゃああなたは誰なの?」

「ワタシ、セ…ルリアン」

「セルリアン!?」




どういう事!?

セルリアンって喋れたの!?

と言うか私そっくりなんだけど……って事は…




「私も実はセルリアン!?」

「アナタも、セルリアン?ジャア、ナカマ」

「うみゃー!ってそんな訳ないよ!!」

「ナカマ…チガウ…?」シュン





あれ…何か落ち込んじゃった?

どうしよう…この子もしかして私と一緒で仲間とはぐれちゃったのかな?



「あのね…!私も実は仲間とはぐれちゃったんだ…。だからもしだったらあなたの仲間探しも手伝うよ!」

「…ナカマ、サガス…?」

「うん!」

「…ジャア、ワタシモアナタノナカマ、サガス」

「本当に!?ありがとう!」




最初は自分の事セルリアンなんて言うからどうしようかと思ったけどな~んだ!全然良い子じゃん!

よ~し、それじゃあ早速しゅ…







「あれ、それまで何て呼べばいいのかな」



そう言えばこの子の名前まだ聞いて無かった。

さすがにセルリアンちゃんなんて名前はちょっと嫌だしなぁ………そうだ!







「セーバルでどう?サーバルの私にそっくりな(自称)セルリアンだからセーバル!」

「セーバル……わたしのなまえ、セーバル…!!」



うんうん!気に入ってくれたみたい!

ふっふーん。かばんちゃんの時もそうだけど私結構ネーミングセンスあるかも。




「じゃあ仲間探しの旅にレッツゴー!」

「オー!」















それからしばらくセーバルと一緒にこの島を探検したんだけど予想以上に大きくてビックリしちゃった。

セーバルがいなかったら私ひとりで今頃迷子になってたかも…。




「そう言えばセーバルの縄張りはどこら辺なの?」

「セーバルの縄張り、この島ゼンブ」

「すっごーい!じゃあもしかしてこの島の長!?」

「オサ…?」

「そう!とっても頭が良くて何でも知ってて博士達みたいな事を言うんだ。あっ、博士達っていうのは…」








あれ?セーバルがいない…。

ってあっ!?大変!セーバルの前にセルリアンが!





「駄目!!それはセルリアンだよ!逃げて!!」

「…」



あぁ!セーバルは固まってて動けない!!

でもあれぐらいのサイズなら私の自慢の爪でやっつけちゃ…







「ヤめて…!」

「えっ…?」

「セルリアン、セーバルのナカマ。ダイジョウブ、何もシてこないカら」

「えぇ!?仲間!?でもセルリアンだよ!?危ないよ!?」

「じゃあサーバルは、セーバルのナカマに乱暴するの…?」

「いや…それは…」






仲間って…この子本当に自分の事セルリアンだと思い込んでるのかな…?

でもセルリアンも何故か私達の事見つめたまま襲ってこないし…。




「ご、ごめんねセーバル。そういうつもりで言ったんじゃなくて…」

「…セーバルはヘイキ。でも、この子傷ツいた。謝ッテ」

「えぇ!?」




謝ってって言われても…私セルリアン語なんて話せないよ…?

でもセーバルは何だか怒ってるしとりあえずここは素直に…。







「ご、ごめんなさい…」

「!」ピョンピョン

「…イイよって言ってる。良かっタねサーバル。こレでミンナ仲良し」







あ、あれ…?ホントに通じちゃった?

えっ!?と言うか今セーバル、セルリアンが言った事理解してたよね!?









「って事はセーバルってもしかして本当にセルリアンなのーーーーー!!!?!?」

「最初からソウ言ってる…」

「てっきり私の事からかってるんだと思ってたよ~」






…んん?じゃあ私今セルリアンとお話してるって事?

そう言えば前にオオカミがフレンズ型のセルリアンがどうのこうのって言ってたような言ってなかったような…。

ううううぅぅ…ますますよく分からなくなってきたよ…。








「!」ピョンピョン

「うわっ!?ど、どうしたの…?」

「…仲直りの握手、シたいって」

「あ、握手!?」




まさか自分からセルリアンに触れる日が来るなんてちょっと…いやかなり怖いよ!

そもそもどこが手なんだろう…。

これでもし食べられたりなんかしたら…いやでもここはセーバルを信じよう。





「う…うぅ…」

「…!」ムギュ








す、凄い…私今セルリアンと触れ合ってる…?

何だろうこの感じ…




冷たくて



空っぽな感じで



どこか悲しげで…それでいて…













ぶよぶよ…




「ふみゃ~何だか癖になりそう…」フニフニ

「サーバル、その子くすぐったがっテる」

「あぁ!?ごめんね!つい気持ち良くていっぱい触っちゃった」

「~♪」ピョンピョン




相変わらず表情とか何を言っているのかはさっぱり分からないけど喜んでる?のかな。



「…この子、サーバルにナカマを紹介しタいって言ってる」

「仲間?」



















「うわぁ~!!おっきい~!!なにこれー!?」



前に戦ったあの黒いセルリアンより全然おっきいよ、このセルリアン!!

それにトゲトゲで角も生えてて何だかとっても強そう!




そっか…前はセルリアンと戦ってたんだよね。

でも今はこうして一緒にいる…何か変な感じ。





「コレに乗って、移動しよう」

「えっ乗せてくれるの!?わーい!!」




うわっ!いたた…トゲがお尻に…。

え?これに掴まればいいの?



「じゃあ、出発シよう」

「うん!よーし…じゃあセーバリアン号はっしーん!!」

「……何、ソノ名前」

「え?セーバルとサーバルとセルリアン、皆の名前をミックスしたんだよ!カッコいいでしょ!」

「……」







すっごーい!!高いたかーい!

それにどんどん進むよー!

ちょっとゴツゴツしてて乗り心地はあれだけどバスより速いんじゃないかな!?



あれ?今度は何か急に空が暗く…





「うわっ!?何このおっきな鳥~!?もしかしてこれもセルリアン!?」

「そう。今度はこの子が、途中まで乗せていってくれるって」

「わーい!じゃあ今度はトリリアンに乗って空の旅だね!」

「(トリリアン…?)」





すごーい!さっきのセルリアンより、ずっとはやい!!

風が気持ち良いなぁ~!

鳥のフレンズはいっつもこんな風に空を飛んでるんだ…ちょっと羨ましくなっちゃうよ。





「あ…!下にも見た事無いセルリアンが沢山いるよ!?」

「うん。あれは…」

「銀色で綺麗な花のセルリアンだからハナリアンだね!?」

「………」

「あっちには紫色でキノコに足が一杯生えたようなセルリアンがいる!…そう言えばオオカミさんが前言ってた夢に出てくるセルリアンに似てるなぁ…じゃあユメリアンかな!」

「…サーバルのネーミングセンス、分からない…」

「ええっ!?セーバルって名前は気に入ってくれたのに!?」

「ソレはそれ、コレはこれ」

「ひどいよぉ…」












それにしてもセルリアンって私達フレンズみたいにこんなに色んな種類がいたんだね。

もしかしてセルリアンって私達が思っている程悪い生き物じゃないのかな…。






「あーあ、他のセルリアンもセーバルみたいに喋れたらいいのになぁ。そしたら戦わずに済むのに…」

「サーバル…」

「私ね、ずっと考えてたんだ。このジャパリパークには“けものはいてものけものはいない”って言うのにどうしてセルリアンとは仲良くなれないのかなって…」

「それは…」

「ねぇ、セーバル…。…やっぱりセルリアンって私達の事嫌いだから襲うのかな?」

「それは、違う…!……勿論中にはそういう子もいるかもしれないけど…」





う~ん…じゃあどうしてセルリアンは襲って来るのかな?

横を向くとセーバルも私とおんなじ顔で悩んでいる。







「…あのねサーバル、セルリアンはただ自分達に足りないものが欲しかっただけなの」

「足りないもの?」

「うん…。足りないものを補えば皆と仲良くなれると思って一生懸命皆の真似をしたりした。皆で劇をしたり、豆撒きをしたり…。でも結局それは皆の幸せを…皆の輝きを奪うだけだって気付いたの」





そう話すセーバルの横顔は何だかとっても辛そうで…どうしよう自分から質問しておいてこんな事言いたくないけど……









「……分かるように話してくれないと私、頭がぱーんってなって泣いちゃうよ……!!」

「ご、ごめんねサーバル。…えーとつまり…セーバル達とサーバル達は一緒には暮らせないって事」

「えっ!?どうして…!?」

「セーバル達が側にいると、皆を傷付けちゃう。お話も出来ないし」










そっか……。

やっぱり無理なのかな…。




そう言えば私達フレンズってジャパリまんがあるから狩りもしなくなって皆仲良しになったんだよね。

だから我々はフレンズと言うのです…って前に博士達が言ってたけど。

う~ん…何か私達の間にもそういうジャパリまんみたいなものがあればいいんだけど……













「…はっ!?分かった!セーバルがジャパリまんになればいいんだよ!」

「…サーバル?急に何言って…」

「セーバルが私達とセルリアンの架けジャパリまんになるの!」

「…セーバルが…?」

「うん!ふたりでセルリアンの事皆に理解してもらえるように旅をするんだ!」

「旅…?サーバルと?」

「そう!もう争わなくても良いようにってジャパリパーク中のフレンズとセルリアンに話して回るの。色んなちほーに行って、色んなフレンズとお話して…」

「…楽しそう!」

「でしょ!?じゃあ約束だよ!絶対ふたりで旅しようね!」

「うん…!!」






セーバルも喜んでくれてるみたいで良かった。

我ながら良い案だと思うよ、うん!







でも……











「ふみゃああぁぁ…頭が…」

「サーバル!?大丈夫…?」




駄目だあぁぁ…やっぱり私こういう頭使うのは向いてないみたい。

そうだよこういうのは私の役割じゃなくてもっと考えるのが得意な子が…あれ?















こういう時、いつも私の予想がつかない事を言って





ずっと私の側にいてくれて





怖がりだけど優しくて





困ってる子のために色んな事考えて





頑張り屋で






私が一番好きな


















「…サーバル。もうお別れの時間だね」
















え?
















『サーバルちゃーん!!』















この声は………かばんちゃんだ!!













そうだ……




私何で今まで忘れてたんだろう



セーバルと過ごすこの時間が、セルリアンとトモダチになれたこの世界がとっても心地良くて、これが夢なら醒めなきゃいいのにって思ってたのに…。




「駄目だよサーバル。サーバルには、帰るべき場所がある。皆が待ってる」

「…セーバルは一緒に来れないの?」

「わたしは、ここまで」

「そっか…」
















最初から分かってた







どこかが、何かがおかしいって







でも気付かないふりをしてた







それを認めてしまったらこの世界にいられなくなるような気がして







それを認めてしまったら今日のこと全部忘れてしまうような気がして











「……だよ…」

「え?」

「…やっぱり嫌だよ!!セーバルも一緒に行こう!!」

「…サーバル、もう分かってるでしょ」

「何の事!?分からない!!全然分からないよ!!」










どうして…!?



せっかくセーバルともセルリアンともトモダチになれたのに…



どうしてまた離ればなれにならないといけないの!?






…嫌だ







そんなの絶対に認めない






「…じゃあ私が迎えに行く!」

「…えっ?」

「絶対忘れない!


セルリアンと握手した事も!


おっきいセルリアンに乗った事も!


空を飛んだ事も!


セーバルの事も!!


今日あった事ちゃんと全部憶えて、いつかまた必ずこの島に来るから!!それまで待ってて!!」




「…ありがとう。やっぱりサーバルは、サーバルだね」
























あなたは忘れてしまうでしょう


ともに過ごした日々と私のことを

私は忘れない。

あなたの声、温もり、笑顔……その優しく純粋な心

どれほどの時がたっても……

あなたが全てを忘れてしまっても……

私は決して忘れない

本当に、ありがとう

いつかまた、きっと私たちは出会えるから……

今は、さよなら……

サーバル……
























…ちゃん!…バルちゃん!














「ん…あれ…ここは…」

「おはようサーバルちゃん。よく眠れた?」



うぅ~ん…頭が重い。

それに何だかとても長い“夢”を見ていたような…













夢?



「…そうだ!セーバルは!?」

「…セーバル?」

「確か私達渦潮に巻き込まれて遭難して…」

「サーバルちゃん…夢見てたんだね」

「まったく寝ぼけてる暇があったらサーバルも漕ぐのだ!」ワッセワッセ













そんな…




嘘だよ……




あれは夢なんかじゃない!!

だって私とあの子はトモダチで、一緒に旅に出ようって、絶対に迎えに行くからって…………あれ?











私と



















あの子?





あれ…?

あの子って誰の事だろう…。









思い出せない。





でも私さっきまで名前も言えてたのに…。

名前……私がつけた名前。

あれ…おかしいな……早起きした訳じゃないのにどうして………涙が……




「サーバルちゃん!?大丈夫!?」

「ご、ごめんねかばんちゃん…大丈夫だから…」












絶対忘れないって約束したのに…

絶対迎えに行くって約束したのに…

もう何を忘れないのか

誰と約束したのか

何も思い出せないよ…

ごめんね…


















「まーまー。もしかしてそれは予知夢かもしれないよ?」






え?





「よちむって何なのだ?」

「予知夢っていうのはー、これから起こる事を夢で見る事さー」






予知夢……







「どんな夢を見たのか私達には分からないけど、そう思えればサーバルも少しは元気が出るんじゃないかなー」













…そっか

私何落ち込んでたんだろう

そうだよ!今は思い出せなくてもきっといつか思い出せる日が来るよ…!





「…うん!そうだね!ありがとうフェネック」















結局あれは何だったんだろう。

もう今となっては本当にあった事なのか夢だったのか、そもそもどんな事があったのかさえ思い出せないけど…。

その時かばんちゃんの右手でボスが突然こう言ったの。





「アレハウズシオダネ」

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