私の彼氏は見た目5才

NEO

第1話 平和な一時

「あー、暇ねぇ」

 頭の上をひらひら飛ぶ蝶を見ながら、私は思わずつぶやいてしまった。

 空は晴天、気温もちょうど良し。私はベンチに寄りかかって半分居眠りをしていた。

 ここはキリングドール王立魔法学校の中庭だ。授業で使う外庭もあるが、あまりに広大過ぎる事と、壁に守られた街の外である事が理由で普段は閉鎖されている。

 さて、そんな事より……。

「レオンのヤツ遅すぎ!!」

 思わず手に持っていたサンドイッチを入れた紙袋をバッサバサ振りながら、私は辺りを見回した。

 天候がいい上にお昼時だけあって辺りはお昼を取る学生が多いが、私が探し求める人の姿はない。

「全く、どこで油売っているんだか……」

 などとイライラ待っていると、程なくトテトテとこちらに向かってくる彼の姿があった。

「ごめんイライザ。召喚術の授業が長引いちゃって……」

 癖のある金髪がそう言って、両の目を潤ませながらペコリと頭を下げる。これだ、これに弱いのだ。私は18才で彼は15才。3年差はあるがなぜ惹かれあってしまったかは謎だ。私は年上好みのはずなのに。

「まあ、授業なら仕方ないわね。さっさと食べちゃうわよ!!」

 そう言って、私は紙袋を開けた……当たり前だが、サンドイッチはグチャグチャだった。

「どうしたの?」

 私の横に座り、早速とばかりに自分のご飯を食べているレオンが不思議そうに問いかけてきた。

「なんでもないわ。こういうときは……」

 私はそっと呪文をささやいた。すると、グチャグチャになったサンドイッチが見る間に「復元」されていく。自分で言うのもなんだがこのイライザ・レオパルト、こう見えて魔法の成績はいいのだ。

 程なくして元の姿に戻ったサンドウィッチを頬張ると、レオンは食事が終わったようだ。……遅れてきたくせに。

「イライザ、遅い」

 隣のバカヤロウがそう言ってきた。

「あんたに言われたくない!!」

 私はサンドイッチを一気に飲み込むと、その金髪をグシャグシャにしてやった。

「わっ、なにするんだよ!!」

 私の手から逃れようとばたつくレオン。その姿が面白い。

「遅刻のお仕置き」

 私は短くそう言った。むろん冗談である。

「さて、そろそろ昼休みも終わりだし、教室に戻ろうか?」

 一通り遊んだあと、私はレオンにそう言った。

「うー、あとで絶対仕返ししてやる……」

「出来るものならやってみなさい」

 などと返しながら、私は年下彼氏も悪くないなと思っていた……この時は。

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