夜の渚

しじみ

第1話

ガタンと大きな揺れで目が覚めた。

目を開けても微かな光しか見えないことに、ああ、まだ馬車の中なのだと分かった。

大方、石にでも乗り上げたのだろう。

しかしそれによってまた怯える子供達は啜り泣き出した。

それでも大声で泣き出さないのは、あの酷く惨い仕打ちのせいだ。


「アオ、ぼくたち、どこへいくの?」

「さあ……今より酷いところじゃない事を祈ろうね」

「アオはこわくないの?」

「怖いけど、そんな事言ってられないし」

「ぼくが、ぼくがまもるからね」

「ありがとう」


高い格子の隙間から差し込む月明かり。

お天道様は見てるとよく言うが、お月様は私達のことを見ているのだろうか。

陽のあたる場所で生活していないから、きっとお天道様は私達のことを知らないのだろう。


騎士宣言をした子の頭を撫でながら壁によりかかる。

きっと、もう2度と外の世界を見ることなく一生を終えるのだろう。

1人、また1人と消えていったあの子達のように。

目に少しばかりの希望を宿して、扉を抜けていった彼らのように。


「アオ」


じゃらじゃらと金属音がした。

そして頭に触れる手のひら。


「大丈夫か」


暗闇の中で青い瞳がこちらを見ている。

誰かが昔、宝石みたいだと言っていた。

確かにその通りだ。

綺麗な、いつか見た海のように綺麗な青色。

でも。


「大丈夫、心配しないで」


見透かされているようで怖かった。

だからそっと目線を外した。

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