お兄ちゃんが教えてくれたこと
春田康吏
第1話
健ちゃんは、幼稚園に通う元気な男の子です。でも目が見えません。
ある晴れた秋の日、健ちゃんの家にいとこのお兄さんがやって来ました。
「こんにちは。」目は見えない健ちゃんですが、耳は他の誰よりも良いのです。
「お母さーん、お兄ちゃん来たよー。」
「はいはい。あら久しぶり、中に入って。」
「おじゃまします。」そう言うと、お兄さんは奥の方に入っていきました。
向こうから、お母さんとの話し声が聞こえてきます。
健ちゃんは壁伝いに部屋に行き、おもちゃの車で遊んでいましたが、
しばらくすると、お母さんとお兄さんがやって来て言いました。
「健ちゃん、一緒に海にでも行こうか。」
「えっ?ほんと?やったあ。」健ちゃんは飛びはねながら大きな声で言いました。
「健ちゃん、大丈夫?」お母さんが心配そうにたずねます。
「大丈夫だよ。」健ちゃんは自信満々に答えました。
「行ってきまーす。」海に行く途中、お兄さんが突然、話しかけてきました。
「なあ、健ちゃんは「色」って知ってる?」
「知らない。」
「そうか、今日はね、その「色」って言うのを目が見えない健ちゃんには体で感じてもらおうと思ってね。」
さあ海に着いたようです。波の音と潮風の匂いがします。
「さあ、海の水を触ってごらん。」
健ちゃんは、おそるおそる手を海水に入れました。
「冷たい!。」
「ハハハ、でも気持ちいいだろ?」
「うん。」
「これが青色って言うんだよ。」
しばらく水を触って遊んでいると向こうの方から、お兄さんの声が聞こえてきました。
「おーい。ゆっくりこっちに来てごらん。」ゆっくりお兄さんの声が聞こえる方に歩いていきました。
すると健ちゃんは、だんだん自分の手が暖かくなっていくのを感じました。
お兄さんは、たき火をしていたのです。
「ほら、あったかいだろ?これが赤色って言うんだよ。」健ちゃんは、何だかとってもワクワクしてきました。
それからお兄さんは、土のごわごわ感は茶色。
草や木の落ちつく匂いは、緑色だと言う事も教えてくれました。
帰り道、お兄さんは言いました。
「もう少し寒くなってきたら、白色っていうのを教えてあげるからな。」
「うん。」
さて、お兄さんは何を使って健ちゃんに白色を教えてくれるのでしょう。
今から待ち遠しい健ちゃんでした。
お兄ちゃんが教えてくれたこと 春田康吏 @8luta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます