流れ星

春田康吏

第1話

 ある夜空がきれいな日のことでした。

小さなお星様はとなりのお星様にささやきました。

「ねえ、そろそろ向こうの方に行ってみたいんだけどいいよね」

「もう?こないだここに来たばかりじゃない」

「だって、ここ飽きちゃったんだもん」

「もうあなたってば、すぐ動きたがるんだから。でも大丈夫かしら?」

「どうして?」

「だってこの間、ここから思いっきり走っちゃった人がいたって、ある人から聞いたんだけど、その人大変なことになったのよ」

「大変なこと?どうなったの」

「なんとその人、あんまり急ぐものだから三日月お月様の先っぽに引っかかっちゃってね、


あわてればあわてるほどからまって取れなくなるわ、お月様はぐらぐらゆれるわで、

お月様にいるうさぎ達もびっくりしちゃってね。何とか一緒に手伝ってもらったらやっと取れたんだって。」

「うそー、そんなことがあるの。それでその人、何もなかったの?」

「うん、ケガはなかったみたいだけどそれからと言うものそのお星様はもう走るのはやめたみたいよ。だからあなたもよく考えた方がいいわね」

小さなお星様は迷いました。

怖い思いはしたくない。

だけど思いっきり動いて遊びたい。

なかなか眠れないその日、小さなお星様は夢を見ました。

それは遠い遠い記憶の中から…。

「大丈夫だよ。みんな見てるから。大丈夫だよ。みんな、ついていてくれるから」

小さなお星様は、ずいぶん前に触れたことがあるような暖かい言葉とぬくもりを感じました。

そしてあくる日の夜、数え切れないほどのお星様が見守る中、小さなお星様は決めました。

「ボク、行くよ」

ちょうどその頃地上では、暗い一本道を男の人と小さな女の子がゆっくり歩いていました。女の子が空を見上げながら言いました。

「今日は、お星様がいっぱい見えるね」

「そうだね。明日は、きっといい天気だぞ」

男の人は、女の子の手を優しくにぎりながら言いました。

「あそこに、みきちゃんの弟もいるのかな。」

男の人は、一瞬びっくりしたような顔をしましたが笑って言いました。

「うん、きっといるよ。」その時でした。

「あっ、流れ星!」みきちゃんが大きな声をあげました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

流れ星 春田康吏 @8luta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ