健ちゃんの入園式

春田康吏

1話

 外はいつの間にかあたたかくなり、桜の花も満開になったこの日、健ちゃんは何だか落ち着かなくそわそわしていました。

だって明日は、健ちゃんが通う幼稚園の入園式なのです。

お母さんは、健ちゃんが元気よく幼稚園に行って、たくさんのお友達と遊んでくれたらいいなあ。と思っています。

でも、その健ちゃんは心配屋さんなので、どんな所かなあ、怖い人はいるのかなあ、とかいろいろ思っているようです。

そんな健ちゃんを見てお母さんも少し心配そうにしています。


「健ちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。たくさんお友達も来るし、楽しい事がいっぱいだよ。」と言います。


夜になってお父さんが会社から帰ってきました。

夕ご飯の時、お父さんもそんな健ちゃんを見て、

「健一、お父さんが子どもの時も健一と同じで初めて幼稚園に行く時は怖くてしょうがなかったなあ。でもな、一回行ってしまえば次からはとっても楽しくなってきたんだよ。」

もちろんお父さんが、自分の幼稚園の頃を覚えているわけありませんが…。

でも、その話を聞いて健ちゃんは少し安心したようです。

それから健ちゃんは、お父さんと一緒にお風呂に入って、歯磨きもちゃんとすませておふとんに入りました。

健ちゃんは、「おやすみなさい。」と言ったのと同時に眠ってしまいました。そしてついに朝がやってきました。

「それじゃあ健一、がんばるんだぞ。」

お父さんは、健ちゃんより先に会社へ行ってしまいました。

そのあと健ちゃんも新しい服に着替えて、いよいよ出かけるときが来ました。

健ちゃんは、お母さんと手をつないで幼稚園に行きました。

幼稚園は、近所なので健ちゃんもよく知っている場所です。

幼稚園に着くと、すぐに式が始まりました。

健ちゃんは、やはり緊張して体がカチカチに固まってしまいました。

そんな健ちゃんにお母さんは、

「名前を呼ばれたら、はい。って言うんだよ。」と小さな声で言いました。

園長先生のお話が終わってから担任の先生がみんなの名前を呼びます。

健ちゃんの心臓は、張り裂けそうです。

「井上健一くーん。」

「はーい。」

何とか健ちゃんも他のお友達のように元気よく返事をすることが出来ました。

お母さんも健ちゃんもホッとしています。

式も無事終わり、健ちゃんは園庭ですべり台をすべったりブランコをこいでみたりして遊びました。

お母さんの顔も健ちゃんの顔も笑顔が、いっぱいです。

園庭に咲いているチューリップやタンポポも心なしか笑っているようです。

「健ちゃーん。起きなさーい。」

遠くからお母さんの声がします。健ちゃんは、びっくりして目を覚ましました。

何と健ちゃんは夢を見ていたのです。今日が本当に幼稚園に行く日なのです。

健ちゃんは、昨日とはうって変わって元気よくお母さんに言いました。


「もう大丈夫だよ。だって僕、幼稚園一回行ったもん。」

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