私は嫁? お姉さん??

NEO

第1話 さらば母国 ようこそ新天地

 私はセフェム大陸から延々と船に乗り、こうしてサロメテロール大陸に渡ってきた。

 別に好きで旅をしたわけではない。父である国王の命でこの王国の第5王子の元へと嫁がされたのだ。24才の私だって分かる。いわゆる政略結婚だ。世界最大の国サロメテ王国とのパイプを作るため、末っ子である私は「使われた」のである。

「あーあ、来ちゃったのはいいけど、どうしたものだか……」

 街の名前は忘れてしまったが、さすがに王都に隣接する港だけあって活気がある。しかし、私の気は晴れない。政略結婚なんてありがちだが、顔も見た事がない相手と結婚なんて言われてもピンとこない。途中のプロセスが飛びすぎている。

 船からは私の嫁入り道具や私物の荷下ろしが行われている。だいぶ切り詰めたつもりだが、それでも結構な量だ。事前に聞いる話では、そろそろサロメテ王国の馬車が到着するはずであるのだが……。

「姫、お迎えが参りましたぞ!!」

 桟橋に降りていた使用人が声を上げる。姫ねぇ……。

「分かりました。今行きます」

 使用人に返し、私は船から桟橋へと下りた。この船ともお別れか……。

 すると、桟橋には馬車の列が出来ていた。荷馬車には次々と私の荷物が積まれていく。が問題はこっちだ。車列の最前列。サロメテ王国の紋章がドアに描かれたやたら立派な馬車だ。馬車の御者が静かにドアを開ける。ゴクリ……。

 変におセンチな私ではあったが、この瞬間それが一気に吹き飛ぶ。どんな人であれそれなりに対応……。

「ようこそサロメテ王国へ。私は第5王子、ジーン・エドワード・サロメテです。ジーンとお呼びください」

 馬車から降りて来たのは当たり前だが男……しかし、若い。若すぎる。まだ10代前半くらいか?

「これはご紹介賜りましてありがとうございます。私はアリシア・エルザ・セフェムですアリシアと……」

 挨拶しながらも、ええええ!?という声が頭から消えない。

「荷造りが終わりましたら、早速城にご案内いたします。気に入って頂ければよろしいのですが……」

「えっ、あっ、はい。ありがとうございます」

 いかんいかん。しっかりしなくては。

「本日はゆっくりお休みになって頂き、明日は早速婚礼の儀となります。せっかちなところが父上の欠点でして……」

 とジーンが本当に困った顔をした。ちょと可愛い。

「分かりました。何事も早い方がいい……よろしいですよ」

 私はそう言って笑った。

「そうおっしゃって頂けると恐縮です。……あの、ここからは堅苦しい言葉は抜きでいきましょう。お伺いしますが私の事をまだ若すぎると思っていませんか?」

 今まさに思っていたことをズバーンとぶち抜かれ、私は即答出来なかった。

「やはり……私もそう思います。こんな素敵な方をお迎えするなんて、私としても心苦しいですよ」

 急にフランクな口調になったジーンが、そう言って申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 ……うわ、褒められた。

「まだ人としても未熟ですが、どうぞよろしくお願いします」

 そう言って丁寧な礼をするジーンを、私はそっと抱きしめた。

「無理して堅苦しい事を言ったりしなくていいですよ。ほら、私なんてこんな感じだし」

 照れ隠しにそういう私。なんだこの展開は。お母さんか私は。

「あ、あの、すいません。恥ずかしいので……」

 言われて慌てて離した。

 これが、彼との初対面だった。

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