”ほむだわけ”

登月才媛(ノボリツキ サキ)

第1話 その男、嘘吐きにつき……

歴史には残っていないが、文字も普及していない程の大昔の事である。


穂麦ほむぎ、こっちあ、手伝えぇ!!」

「おう、これ片付けたらなぁ」

俺は漁場で働いていた。住んでいる場所はのちに対馬と名の付く暖かい島だ。

陸でコメを育て、海で魚を捕る。そんな普通の暮らしをしている。


ただ、人より違うところがあるとするならば、とんでもない怪力の持ち主だということだ。

加えて、人より嘘を吐くのが得意だ。



サバを読ませたら右に出る者はいない。


彼が大きな国で発する言葉も、まあ、…言うまでもないのである!


「穂麦のたわけ!あれほど火を絶やすなと言ったに!」

「うええ、木はちゃんとくべたに!」

よせばいいのに、姉弟は昼飯が完成しない内から騒いでいる。

走って、殴ってじゃれているところを見るとまたもや何かあったようだ。


「じゃあなんで木が煙を吹くんだ!」

「シカが煙をふかせと言ったんだ!」

「ほむだわけ!シカは喋らんだろう」

「カエルが魚のあるところを言わせるために必要だと言ったんだ!」

「ほむだわけ!カエルは海に行ったら死ぬわ!」

「川があると言うたんだ!」


言うまでもない。この男は大ぼら吹きだ。

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”ほむだわけ” 登月才媛(ノボリツキ サキ) @memobata-41

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