一つ前の駅で降りたら

青木田浩

第一章 奇跡の始まり

第一話 気まぐれに

 その日、いつも降りる駅の一つ前の駅で降りた男は、見慣れないホーム、駅前に溢れる看板広告に少し目を眩ませた。地元の駅は都内とはいえ、郊外にあるため、二十三時頃になるとほとんど人影がない。それに比べて、この駅は南口に円環状のロータリーがあり、様々な音が飛び交っている。しかし、その耳馴染みのない雑音には、どこか心地良さを感じていた。

 駅の南口から出た男は慣れない足取りでロータリーを西に抜け、一駅先にある自宅のアパートに向かって歩き出した。少し歩いていると、再び眩しさを感じる光が目に飛び込んできた。コンビニだ。駅を出た時よりも明るく感じるその光に、虫のごとく引き寄せられ店の中へと入っていった。

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