第17話 8/8
「イサオさん、ちょうどパパイヤの実が取れたので食べましょうよ。」研修旅行でフィリピンに来ている私は、コテージでバーベキューをすることになっていた。
「トクヤマさん。日本風のスイーツと一品料理を私に作らせて頂けませんか?」
「イサオさん。何か作ってくれるんですか?」
「色々と教えてくれるトクヤマさんに感謝していますから。」
パパイヤは完熟のものと未完熟の青いものがあった。未完熟のものは水にさらして千切りにする。ニンニクをオリーブオイルで炒めて、そこに千切りにしたパパイヤとタコを入れて、塩胡椒、そしてレモングラスなどを入れる。熟したパパイヤは半分は生のまま、もう片方はシロップ漬けにした。ドライマンゴーもあると聞いて、「パパイヤとドライマンゴーの白玉添え」を作った。中々の自信作である。私の勤めている部署は食品関係の開発部門である。男であってもそれなりには料理はできるのだ。
今日はコテージに現地のジャズバンドが演奏しに来るらしい。鍵盤が活躍するジャズは今日という日に相応しい。
「イサオさん。そんなに料理が上手かったら親孝行だと思いますよ。私なんて上手くできませんから。ママにも美味しいものを食べさせたいのに。」早速タコとパパイアのペペロンチーノ風を食べながらトクヤマは言う。
「そんな大したものじゃないですよ。回数を重ねれば上手くできますよ。トクヤマさんも。」トクヤマは美味しそうに食べる。歯並びが素敵な女性だ。
「イサオさんはやっぱり洋食が得意なのかな?作るのは。」トクヤマは急に敬体をやめた。何かあるのだろうか。
「いや和食も作れるよ。そんな大したことじゃないけどね。」
「ねぇ。私、イサオさんのことをもっと知りたい。だからトクヤマじゃなくてアリスと呼んで。」トクヤマは顔をすっかり赤らめている。もしかして、恋の予感かもしれない。ジャズバンドの演奏も始まり、あたりは急にムーディになっていた。
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