第23話 感応式

 いよいよ感応式が始まる。


 ここはドラゴンの巣と呼ばれる場所で、その中の最も大きなホールで式が執り行われる。

 王宮の木の隣にあり、同じような大きな木が横に並んでいるので壮観だ。

 どちらの木もサーシャリャーと同じ種類の木で樹齢は1万2千と推定されている。

 ドラゴンの巣はマザードラゴンの拠点として利用している。

 ドラゴンの卵もここに厳重に保管んされており、卵の中には100年を超えて、守られている卵もあり、その卵が今回の感応式の中にあった。



 候補生の前には多くのドラゴンの卵が置いてあり、ひと際目立つのが黄金の大きな卵だ。

 マザードラゴンの真ん前に置いてあるその卵は、他の卵よりも1.5倍は大きかった。

 マザードラゴンは食い入るようにナオミをずっと見ていたが、顔の表情からは感情が読み取れなかった。


 昨夜の興奮もそのままに、候補生や父兄、並びにエルフの重鎮達は、今か今かと待ちわびていた。


 マザードラゴンと感応したエルフの女王が、ゆっくりと威厳に満ちてホールに入って来た。

 高齢なので、ゆっくりとしか歩けなくなっていた。



「紳士淑女の皆様。

 お集まり頂いて光栄に思います。

 これから、感応式に・・・・」


 女王の言葉は一言一句心に響き渡り、そこにいた全員が感動していた。

 最後に女王はこう言った。


「今回は、将来のマザードラゴンに感応できる子供が現れました。

 とても喜ばしいことで、ドラゴンの精霊に感謝したいと思います。

 ナオミ、こっちに来てくれますか?」

「はい」


 ナオミはそう返事をすると、お辞儀をし、素直に女王の言葉に従って前に進み出た。


「私の横に来て下さい」


 ナオミは少し躊躇したが、言葉に従って横に並んだ。


「皆さん、彼女がマザードラゴンと感応できるナオミです。

 私は長年この日を待ちわびていました。

 私が亡き後は、この子がエルフの女王となって、皆さんを導いてくれるでしょう。

 異論が出るのは承知していますが、これは長いエルフの歴史のから導き出された決定であり、今後変わることはありません。

 ドラゴンの精霊によると、ナオミは地球の日本と言う国の王家の人間だそうです。

 本当にそうですかナオミ?」


 ナオミは、将来のエルフの女王になると聞かされた時は心臓が止まるかと思った。

 それに、ナオミは最も秘密にしていた事を、女王の口からすっと出てきたのでびっくりした。

 でも、もはや秘密ではなくなったので正直に答えた。


「はい、そうです。

 私のお父様は、日本の国の王の次男として生まれました」

「やはりそうでしたか。

 これで安心しました。

 それでは儀式を始めます」


 場内は時期女王の誕生に騒然としていた。

 多少の予測をしていた人達もいたが、女王自ら宣言したのだ。


 最も驚いたのは、何と言っても兄妹のスリーとニンフルではないだろうか。

 さっきまでは妹だと思っていたナオミが、将来の女王になる。

 女王の言葉に終始びっくりして、2人は口を大きく開けたままだった。


「みなさん、お静かに。

 それでよろしい。

 それではお願い」


 そう言うと女王は、マザードラゴンの方を向いて心の会話をしていた。

 すると、多くの卵が一斉に孵化しだした。

 青銅の色のドラゴンが最も多く孵化していく中、黄金色の卵も孵化を始めており、殻に幾筋のヒビが入っていった。


 卵の中には1つだけ極端に色が違うのがあった。

 真っ赤で、夕焼けみたいな色をしていた。

 噂によると、これが千年超えて守られていた卵らしかった。

 人々はマザードラゴンの孵化も気になったが、この異色のドラゴンも気になっていた。


 スゲー。真っ赤な卵だよこれは。

 異色って、どうゆう意味??

 俺に聞かれても、分かりませ〜〜〜ん!!!













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