偽りの美姫

M.M.M

事の始まり

「これが私?」

大きな鏡の前に立つ女は恍惚としながら言った。

周囲にいる派手な衣装を着た女たちも目を丸くし、「嘘みたい……」「本物そっくりだわ……」と口々に感想を述べる。

「こりゃすごい……魔法とは偉大なもんだな……」

豪華な椅子に座る男は感嘆して言った。

「いかが?金貨20枚でこの粉を譲ってあげる」

奇怪な儲け話を持ってきた女は微笑んで言った。

「20枚、か」

面白い事を考えついたものだ、と店の経営者は感心した。

彼はすぐに損得勘定を始める。

この方法を使えばいつもの2倍の料金でも客は喜んで払うだろう。3倍にすることも不可能ではない。金貨20枚ならすぐ元が取れる。

しかし、当然ながら危険もある。自分たちが取引しようとしている粉は違法なものだ。見つかれば罰を受けるし、”あの女”と同業者たちを怒らせることになる。それだけの価値があるだろうか。

「ばれた時が怖い?」

経営者の思考を読んだのか、女は言った。

「麻薬と違って小さな罰で済むでしょう?」

「いや、それはそうだが、あの人に知られたら……」

「報復があると?むこうには何の不利益もないのだから心配いらないわ。もちろん怒りはするでしょうけど、復讐したら返ってむこうの名声が地に落ちる。違う?」

女は自信たっぷりに言う。

「確かに……」

経営者の脳内で天秤が傾く。

一瞬、この女からアイデアだけ盗み、この街にいる魔術師から安く粉を仕入れたらどうかと考えた。しかし、話を持ち込むだけで密告されるリスクがあった。部外者であるこの女から買ったほうが安全であり、相手もそれをわかっているに違いない。

「……3倍の量で金貨56枚。どうだ?」

それを聞いて相手はふふっと笑った。

「いいわ」

「交渉成立だな」

経営者は握手をした。

(客は共犯みたいなもんだから黙ってるはずだ。ここの女たちも問題ない。そもそも誰も損をしないんだ。ちょっぴり魔法の力で金儲けをするだけさ……)

彼は肝が太かった。ばれたら街中から顰蹙を買うだろうが元より人に褒められることなどない商売。重要なのはどれだけ金を稼げるかだった。

彼は笑顔を作りながら商売を持ちかけてきた女に感謝した。

彼女の本当の目的には気づかずに。



斜陽が彼方の山脈にかかっていた。

世界の果てから光を浴びて城塞都市エ・ランテルは黄金色に染まり、人々は長い影を連れて帰路に着く時間帯だった。芸術家が思わず筆をとりそうなほど壮美な光景だったが、下級市民の人々は感慨もなくただ家路を急ぐ。魔法の照明も持たない彼らに夕暮れを楽しむ余裕はない。黄金の時間が終われば暗黒の時間がやってくるからだ。

防壁と多くの兵士に守られていようと人間は闇を恐れる。事実、闇夜の時間にモンスターの大群に襲われて滅んだ都市はいくつもあり、この都市もまたアンデッドの大群が発生してその一例に加わる寸前だったのは誰もが記憶に新しい。

そんな憂いを帯びた人々と対照的に、闇こそ我が同胞というように優雅に歩く女が一人いた。その肌は真珠のように白く、対して髪と瞳は黒い。歩くたびにポニーテールとローブの裾がゆれ、斜陽が照らす顔はエルフさえ見惚れるほど美しかった。彼女の前に立つ者は男も女も恍惚となり、慌てて道を譲る。

それはいつもの光景。

しかし、今日だけは違っていた。

朱色のローブを来た男が彼女の前に立ちはだかったのだ。

目には剣呑な光があった。

「何?」

彼女は足を止め、美しくも鋭利な声で尋ねた。

相手は答えない。

彼女の周囲にいた人々は何事かと不安な顔になる。

男がついに口を開いた。


睡眠スリープ


魔法により周囲の人間がばたばたと倒れる。

突如として戦いの口火が切られ、彼女は殺戮の気を放つ。

そこにはこんな魔法が効くと思っている相手への嘲笑と侮蔑も混ざっている。一撃で終わらせようと右手を上げるが、殺さず情報を引き出すべきだろうと考え直した。


静寂サイレンス


敵の第二の呪文により無音の空間が周囲に広がった。この中では声を上げて救助を呼ぶことはできず、魔法を使うには無詠唱形式を用いるしかない。しかし、これも彼女には意味がない。目の前のハエを殺さずに捕まえる方法を思いつき、実行した。


人間種魅了チャームパーソン


相手の精神を操ろうと試みる。しかし、効いている様子がない。

彼女は思った。

(魔法か、マジックアイテム?面倒ね……)

その時、敵は予想外の魔法を使った。


水創生クリエイトウォーター


空中に水が生み出され、彼女に降り注ぐ。

彼女の反応は「は?」だった。

酸や毒液ならわかる。肺の中を水で満たす魔法《溺死ドラウンド》にも対策をとっている。しかし、ただの水はただの水だ。

体と周囲の地面がしとどに濡れるという当然の結果が訪れた。

(こいつ、何がしたいの?)

攻撃にもなっていない行為に彼女はただの狂人なのかと思い始める。

しかし、そうではないと思い知った。周囲で眠っていると思い込んでいた人間3名が懐から奇妙な陶器を取り出し、彼女の足元へ投げつけたからだ。裏通りにしては人が多いと彼女が気づいていたかはわからない。

静寂の魔法がかかっているため陶器は無音で割れた。

中から飛び出たのは――雷。

治癒や補助魔法を液体に帯呪させるポーションが存在するなら攻撃魔法をこめることも可能だろう。

3つの陶器から生まれた白い雷撃は水を伝って彼女を包む。その光景は無数の白い蛇に襲われるようであった。

雷撃が終わると住人に偽装した殺し屋達はダガーを抜いて襲い掛かる。

殺せると彼らは確信した。

王国中に名前が轟く魔術師であろうと策を練ればこんなものだと。

しかし、彼らの策は致命的な間違いがあった。


次元の移動ディメンショナルムーブ


標的は3人の前から消え、勝利の確信が混乱に変わった。

あれだけ雷撃を受けて魔法を使えるはずがない。

電気属性を無効化する装備を常につけていたのか。

すぐに街から逃げねばと3人が考えた時、無音の世界に声が生まれた。

「ぎゃああ!」

発生源は彼らの奇襲を援護したローブの男だった。

3人は見た。彼の右胸が真っ赤に染まり、剣が突き出ているのを。

背後から刺すのが誰かは言うまでもない。

夕日に照らされ、黄金色に染まる殺戮者。奇妙なことに3人は驚愕と恐怖に包まれながらもその光景を「美しい」と思った。

それが彼らの最後だった。


魔法三重化トリプレットマジック雷撃ライトニング


貫通攻撃でもある魔法に3人は貫かれ、死亡した。

「あなたはもう少し生きられるわ」

彼女は地面で悶絶する男に言った。

不機嫌だった。風や電気を含む空気エア系の攻撃と防御に特化した自分に雷撃魔法を使うなど本来なら爆笑ものの行為だが、不意を突かれたことは事実だった。別の属性攻撃ならダメージを受けていただろう。

「なぜ襲ってきたの?言いなさい」

傷口を剣でぐりぐりとこじり、激痛を与える。

「ぎ……ぎゃぁぁぁぁぁ……」

悲鳴はそれほど大きくなかった。

痛みが強すぎると人間は声すら出せない。

男は激痛と引き換えに極めて珍しいものを見ることが許された。美しくも氷のように冷たいと噂の美姫がほんの少し頬を緩ませたのだ。

嗤った。

彼女は嗤っていた。

「痛い?話せば助けてあげるわ」

もちろん大嘘だ。

それがわかっているのか、男は震える手で腰のベルトから白い筒を引き抜く。

その端には紐がついており、男はもう片方の手でそれを引き抜こうとした。

ぼきり。

腕を折られ、男はさらに悶絶した。

「錬金術武器?他にもあるなら試してみたら」

彼女は愉快そうに言った。

しかし、それに対して男も苦痛に顔を歪めながら笑った。

「いい……んだな……?」

彼は顎を勢いよく閉じ、口内で何かを噛み潰した。

「うっ!」

男の口と鼻からしゅうしゅうと白い煙が上がり、体が痙攣する。二、三度体が揺れると男は動かなくなった。

「……っ」

舌打ちが静かな空気を揺らした。

拷問や魔法で情報を引き出すことへの最大の対策をとられた。他の仲間を生かしておくべきだったと悔やむが遅すぎる。

どうしようか思案しているとガシャガシャという鎧の音がした。

金属鎧を鳴らしながら走って来たのは長槍を持つ二人の衛兵だった。二人一組で街を巡回していることを彼女は思い出す。

「ナーベ様、これはいったい!?」

「さきほど白い発光が見えたのですが?」

衛兵たちは驚愕を顔に貼り付けたまま聞いた。

「襲ってきたので殺しました」

彼女は簡潔に答える。

「彼ら全員を、ですか……?」

4つの死体を見て、二人の驚愕は恐怖に変わった。元より一人で軍に匹敵するというアダマンタイト級冒険者だが、聞いて知ることと体験することは意味が違う。

「し、死体を確認しろ。身元がわかるようなものを探せ」

「は、はい……」

上司であろう兵士に命じられ、もう一人は死亡した暗殺者たちを調べ始めた。

「ナーベ様、何をしているのですか……?」

剣を腰から外し、ロープで鞘と柄をぐるぐる巻くという謎の行為をしている彼女を見て彼は不思議そうに尋ねた。それでは剣を鞘から抜けないだろうと。

「念のために」

彼女は奇妙な答え方をした。

「ナーベ様、こちらへ来て頂けますか?」

雷撃で死んだ男を調べている兵士が彼女を呼んだ。

何か見つけたのかとナーベラルはそちらへ行く。数歩進んだとき、彼女の背中にぞわりとした感覚が生まれた。体をひねり、突き出された槍を紙一重で避ける。それを持つのはもう一人の衛兵――いや、彼らは衛兵などではなかった。

(やっぱりグルだったわね……)

聡明な冒険者なら戦闘が終わった途端に巡回中の衛兵が現れるなど都合が良すぎると思ったかもしれない。あるいは警笛で仲間を呼ばないのはおかしいと。

彼女はどちらでもない。

最初から人間など信じていなかった。

「はあっ!」

彼女は偽兵士の懐に踏み込み、このために用意した鞘つきの剣を振った。力任せのフルスイングだ。オーガに殴られたように兵士の体が吹き飛び、民家の石壁にめり込んだ。反作用により少し体勢を崩すが、もう一人の兵士は攻撃してこない。

おや、と彼女が思って見ると敵はぽかんとしていた。

「な……何なんだ、お前は……?魔術師じゃないのか……?」

「何、そのゴミみたいな質問は?」

彼女は聞き返した。

敵が混乱の極致にあったのは常識からすれば仕方なかった。

どんな魔術師でも接近戦になれば非常に脆い。だからこそ戦いでは仲間に守られながら決して前衛に出ず、たとえ帝国の生きる伝説、フールーダ・パラダインであろうと多くの護衛をつけて移動する。刃物を所持する魔術師もいるが、あくまで緊急時のためであり、お守りに近い。

では、オーガの如く接近戦をこなせる魔術師とどう戦えばいいのか。

答えは一つ。打つ手はない。


人間種魅了チャームパーソン


彼女は今度こそと思い、残った男を無力化しようとする。

相手の手から槍が落ち、瞳に膜がかかり始める。

いけると彼女は思った。

しかし、それが完了する直前に敵は最後の力を振り絞って口内の何かを噛み、口と鼻から白い煙を出して倒れた。

「っ!こいつも!」

彼女は壁にめり込んだ最後の一人に近づくが、その男も打つ手なしと悟ったらしく、すでに口から白い煙を出して絶命していた。

この場で生きているのは影さえ美しい魔術師だけだ。

「虫けらどもが……」

恐ろしく冷たい声が響き、斜陽は逃げるように山脈のむこうへ沈んでいった。



殺戮の加害者とも被害者ともいえぬ美女が立ち去ると近くにあった建物から3対の目がそれを追いかけ、しばらく放心状態が続いた。

「すげえ……」

坊主頭の大男がぽつりとつぶやく。

「すごいなんてもんじゃないぞ。アダマンタイト級冒険者ってのはどれもあんな化け物なのか?」

短髪の男が揶揄の混じった賞賛を送った。

「なあ、あの一撃を見たろ?魔術師にあんなことができるのか?それともお前みたいに神官戦士なのか?」

「それはねえぜ」

問われた大男は断言した。

戦士と間違われることが多い彼は信仰の元に日々の鍛錬を行う信仰系魔法詠唱者だった。

「使った魔法を見ただろ?あいつは間違いなくシュラと同じ魔力系だ。そうだろ?おーい?」

一人だけ放心状態が終わってない小柄の男に大男は聞いた。

「……え?ええ、そのはずです。第3位階の雷撃を3重化するなんて。あれで魔力系じゃなかったらモンスターですよ」

シュラと呼ばれた男の声は感嘆よりも恐怖が濃かった。

「じゃあ、どんな手を使ってる?強化系の魔法?それとも魔法のかかった装備か?呪いって事はないと思うが。いやー、すごいものが見られたな」

短髪の戦士は面白そうに分析し始めた。

「装備の力だと思います。身体強化の魔法を使ってた様子はありません。よほど高価なものでしょうね」

「すげえなあ。とびきりの才能の財力か。強さの頂点ってのはわかってたが、いよいよ自信なくしたぜ。とっくに冒険者の道はあきらめてたけどよお……」

大男はため息をつき、花が萎れるように頭を下げた。

彼らはかつて冒険者を目指したワーカーであった。冒険者なら街中で同業者が襲われればすぐに参戦しただろう。彼らが高みの見物を決め込んだのは相手の戦力が不明であることと金にならない戦いだったからだ。

「さすがは人類の守護者か。で、襲ってきた連中は何者だ?誰に雇われた?」

「そこだよ!」

大男は再び頭を上げた。

「どこの馬鹿が冒険者のトップに喧嘩を売ったんだ?すぐに戦士モモンも出てくるし、組合も黙ってねえぞ」

「だな。街をまるごと敵に回すようなものだ。ということは、暗殺の依頼主はよその土地の誰か?しかし、どんな理由で……」

彼らが話していると外から警笛の音が聞こえた。

「お、本物の衛兵が来たらしいな。これから騒がしくなるぞ」

「衛兵に今見たことを話したほうがいいでしょうか?」

「俺たちには関係ねーよ。黙っておこうぜ」

「いいえ、私の代わりに話しておいて」

3人とは別の声が言った。

「「「…………え?」」」

窓の外を見ると不可視化を解除した絶世の美貌が現れ、ワーカーたちは石のように固まった。

「視線を感じたから連中の仲間かと思ったけど、違うようね。私は面倒だから兵士たちに説明をよろしく。いいわね?」

3つの石像は少しして首を縦に振った。



「待ち伏せされたか」

「そのようです」

ナーベラル・ガンマは片膝をつき、頭を垂れて主君の声を聞く。

エ・ランテル最高級の宿でもこの部屋だけはマジックアイテムによって魔法による盗視盗聴を防いでいた。壁は分厚く、物理的な盗聴は不可能だと店の経営者は断言したが、アインズはそれを信用せず、隠密能力に秀でたモンスター達に宿の各所を監視させている。もしもラビットイヤーのような強化魔法や生まれつきの過剰聴力で彼らの秘め事を聞こうと試みる者がいればその人物は行方不明の運命が待っていた。

「仕方なかったとはいえ、やはり裏通りなど歩くものではないな。対策をとっておいて正解だった」

「仰るとおりです」

「……で、襲われる心当たりは?」

アインズはすぐ本題に入った。

「申し訳ございません。私には思い当たる節がありません」

「まったくか?」

「はい」

「一切ないか?」

「一切ございません」

「……そうか」

部屋に少し沈黙が下りる。

この時、アインズの心中を書き出せばこうだった。

(ほんとか?何かやらかしたんじゃないのか、ナーベラル?)

ナーベラル・ガンマは人間の感情や機微に疎く、そもそも関心すら持っていない。かつては無礼者や言い寄ってくる男がいたら殴るか、ボコボコにするか、拳で黙らせるか。要するに暴力で解決しようとした。それにうっかりミスの前科も多い。それらを踏まえるとどこかの偏執的な貴族や金持ちから恨みを買ったのではないか。

そう思う一方で、疑いすぎるのもまずいかとアインズは自分を叱る。

ナーベラルは一人で行動した際の出来事を詳細に報告しているし、全くの逆恨みという可能性もあるのだから。

「アインズ様、これはシャルティア様を精神支配した者に関わりがあるのでしょうか?」

ナーベラルは最も警戒していることに触れた。

「絶対に違うとは言い切れないが、それにしては敵が弱すぎる。あの敵なら第3位階以下の魔法など使わないはずだ」

アインズもそれを真っ先に考えたが、解せなかった。

相手は6人もいたとはいえ個々は少しも強くない。待ち伏せし、気を引いてからの奇襲。雑魚の暗殺団が必死に知恵を絞って強者を倒そうとした。そんな感じだ。世界級アイテムの持ち主ならもっと有効な奇襲方法があるはずだ。

「それでは一体誰が何の目的で……」

「ナーベラル、私に答えを求めるだけで済むならお前の頭は何のためだ?」

「も、申し訳ありません!」

ナーベラルは絶対支配者のかすかな苛立ちを感じ、床に額をつけんばかりに頭を下げた。

対して、アインズは罪悪感が湧く。

本当は「俺だってわかんないよ」と言いたかったが、ナザリックの絶対支配者としてそれは許されない。

おそらくナーベラルは偉大な御方のことだから無数の可能性を想定し、すぐに真実へたどり着くと思っているだろうとアインズは思っている。

んなわきゃない。

しかし、部下たちの信じる智謀の王は演じねばならず、同時に犯人も捜さなければならない。

この難題をクリアするため、アインズには2つの作戦があった。

「見当はついているが、今は確証のない段階だ。ナーベラル、私はお前がどんな風に考えるかを知りたい。ほかの者と相談して良いからこれぞと思うものがあれば言ってみるがいい。それが見当違いの推測だったとしても怒る私ではないぞ」

これが第一の作戦。

ナーベラルに推理させ、有望なものがあれば自分も考えていた体で検証するといういつもどおり浅はかな考えだった。

「畏まりました!浅はかであった私をお許しください!」

「許そう」

(浅はかなのはどっちだ……)

アインズの罪悪感がさらに増す。

その時、ドアがノックされた。

ナーベラルはいつでも魔法を放てるよう構える。

「誰?」

「夜分に恐れ入ります、ナーベ様!」

宿の従業員の声だった。

「冒険者組合の方がいらっしゃっています。組合長が至急お二人にお話があるので組合まで来てほしいと……」

「ああ、襲撃について説明しろということだな。行くぞ」

アインズは椅子から立ち上がった。

組合へ行くのは第二の作戦のためでもあった。

人間たちに犯人を見つけてもらうのだ。死体の身元などはこの都市の警察的機関が調べている最中だろうし、冒険者組合もそのトップが狙われた以上は必死に捜査してくれるはず。人間のことは人間が調べたほうがよいに決まっているし、人海戦術は古典的だが有効な捜査方法だ。

(本当に他力本願だな。俺自身も必死に考えてみるが……名探偵を召喚する魔法があればいいのに。真実はいつも一つ、だっけ?)

アインズは大昔に著作権が切れた漫画のキャラクターを思い出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る