これが僕の生きる道

Habicht

第1話 僕

 物心がついて記憶に残っていることは少ないけど、僕は甘えん坊だったんだ、と今になれば解る。


 僕は本州の中心に位置する、とある山奥の集落で生まれ育った。


 当時はまだひぃおばあちゃんが健在で、3才の僕はお母さんが帰るまで、毎日、毎日ひぃおばあちゃんと過ごしていた。


 あぐらをかいたひぃおばあちゃんに乗るのが好きで、いつも抱っこしてもらっていた記憶がある…。


 ひぃおばあちゃんはすでに腰が曲がり、幼少の僕には普段は何をしているのかは解らなかったけど、いつも笑顔で僕と遊んでくれていた。


 僕は幼いながらもお酒に興味があって、ひぃおばあちゃんが隠し持っていた赤玉スイートワインをこっそり飲むのがスリルも相まって、僕の楽しみの一つだった。

(幼児のすることだから、家族は気付いていたんだろうと思うが…)


 僕は3人兄弟の末っ子、長男とは5っ離れていて、随分大人に見えてたっけ。

 次男は年子、年の近さと部屋が一緒だったこともあり、喧嘩した記憶はほとんど無いくらい仲良しだ。


 お調子者の長男はいつも、ワクワクとドキドキを運んできてくれた。

 貧乏で買って貰えなかった家庭用ゲームを友達から借りてきて、僕ら(次男と僕)の部屋で親に隠れて遊んだり、見つかっては3人してこっぴどく怒られた。


 お金は無かったけど、ウチには笑顔があった。


 末っ子でぽっちゃり系の僕の笑顔は「かわいい」と評判だったらしい。


 笑顔の元は僕ではなかった。

 それは底抜けに前向きで明るいお母さんが作り出しているものだったんだと、後から気付いた。


 お母さんが長年、姑(おばあちゃん)の執拗な嫌がらせに耐えながらも、笑顔で僕ら3兄弟を必死に育てていたなんて、この当時は知るよしも無かった…。

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