これからの「小説」の話をしよう
川内重信
1.未開拓の領域はどこだ?
👉ポイント
・多くのweb小説は紙の書籍としての出版を意識しており、それがテンプレ化につながっている
・Webでしか楽しめない形態の作品に大きな可能性がある
紙で楽しめる webで楽しめる
小説の集合 小説の集合
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|参入障壁 | 激しい |ブルー |
| が高い | 競争 | オーシャン |
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図:小説の未開拓領域のイメージ
web小説の人気作品を見ていて感じることは、いずれも紙の本で読んでも面白そうだということです。何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれませんが、これは由々しき問題であります。
方々で指摘されておりますように、web小説にはweb小説独自のお作法があるわけです。冒頭でのつかみをしっかりやるだとか、そういうやつです。このようなルールを守りながらかつ出版にも堪える様な作品を作り出さないといけないわけですから、とんだ縛りプレーと言えましょう。
上のベン図でお示ししたように、紙で楽しめる作品とwebで楽しめる作品の僅かな共通部分で激しい競争が発生するわけです。このことが異世界転生や悪役令嬢といったいわゆるテンプレの過剰なまでの横行につながっていると推測されます。『艦隊これくしょん -艦これ-』はブラウザゲームとして開発されたがゆえにあれだけのものができたのでしょうが、現在の競争環境にその余地はありません。
もっとも、これは当然のことと言えます。現状、出版以外で作者が作品の対価として金銭を得る手段は確立されておりません。小説家を職業にしたい人が出版を目指すのは当然のことです。これに対し、動画投稿サイトでは閲覧数が直接収入につながるチャンネルが存在しているがゆえに、多くのwebに特化した動画が投稿されております。
しかしながら、web小説の書き手が皆本気でプロを目指しているかというと、そうとは限らないのではないかと思います。別に出版できなくてもいいから自分の文章を多くの人に読んでもらいたい、このような考え方の人は、開拓者になる可能性を秘めているのではないかと考えられます。
図の右端に「ブルーオーシャン」と書きました。詳しくは適宜ググって頂きたいと思いますが、これは経営学の用語で、需要はあるけれどもまだ知られていない市場を指します。ここに参入して新たな市場を作り出すことができれば多くの顧客を得ることができるとされています。「webでは楽しめるが紙書籍では楽しめない」領域こそがこれからのweb小説を形作るブルーオーシャンなのではないでしょうか。
ではその「webでは楽しめるが紙書籍では楽しめない」とは何なのかということはおいおいお話しすることといたしまして、次回はもう少し大局的に見て、web小説の歴史的な位置づけについて考えたいと思います。
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