生か死か、選択肢はない
息を吹き返した世界
色々とあったが、とにかく私は『廃鉄ブレイカーズ』と名乗る組織に保護された。私を助けてくれた少女は、私を施設に送り届けた直後、別の任務ですぐに別れた。
そして様々な検査と傷の治療を受けた後、案内人に施設の詳しい説明を受けた。
どうやらこの組織は、私のような人間(?)を捜索・保護しており、メンバーほぼ全員が、元は保護された人間なのだという。
「……私達がこの世界で目を覚ました時、必ず自分の半径1m以内に自分の武器『闘器』があるそうです」
「あの剣ともチェーンソーとも似つかない黒い武器の事ですね?」
「はい。闘器の形状や色彩は、人によって様々ですが、おおよそ7つほどに分類できます。切断系統の『剣』と『鎌』に、打撃系統の『拳』と『斧』と、遠距離系統の『銃』と『弓』があり、最後に刺突系統の『槍』の7種が、今のところ本部に報告されています」
「一つ質問なんですが……私の闘器は剣なのでしょうか? アレはあまりに大き過ぎるような……」
「そこはまだ何とも言えません。この組織も設立して間もないので、そういう基準も未だに曖昧で。ただ……私個人の見解としては、大きな剣ですので、やはり剣として扱うのがよろしいかと思います」
そう会話をしながら、私は次の場所へと案内された。
先ほどの話を聞く限りでは、この組織も日が浅い。となると、この組織のリーダーの苦労も、並大抵のものではなかっただろうということも想像できる。
私は思い切って、この組織『廃鉄ブレイカーズ』のリーダーについて、案内人に聞いてみることにした。
「そういえば、この組織にリーダーはいるんですか? できることなら、本人に会ってこの組織に関係することを、色々と話を聞きたいのですが……」
そのことを聞いた案内人の足が止まり、少し考え込む仕草を見せる。
「廃鉄ブレイカーズの代表に……ですか。あの人は変り者というか、ちょっと雲を掴むような感じの人ですからね……。ちょっと話を聞くのは難しいかと。対スクラッパーズに関しては、あれほどの戦力は他にいませんけど」
「そ、そうですか。一体どんな人なんだ……」
「あれ、優里ちゃん? その人は誰だい? 新しい人?」
不意に後ろから、男性に声をかけられ、優里と呼ばれた案内人が、私の背後に視線を移す。
それにつられるように、私も自分の背後に視線を移すと、そこに垂れ気味な目元で柔和な印象を受ける、紺碧の髪を持つ青年が立っていた。
しかし、彼の双眸の色は、絶えず7色に変色し続けているのだ。赤かと思えば紫に変わり、黄になったかと思えば緑になったり……。とても不思議な目をしている。
「あ、はい。穂(すい)ちゃんが連れてきた人にこの施設の紹介を……って代表!? こんなとこで何してるんですか!? 貴方、私達の代表ですよね!?」
「えっ、この人が代表……ですか?」
今まさに話題となっていた、代表と呼ばれる青年が私の目の前にいる。
確かにこれなら、先程の話の意味も納得できる。これは掴み所がないタイプの人間だ。
なんというかこう……神出鬼没さといい、話し方といい、とてもフワフワとしている。
「いやぁ、ゴメンよ。『僕の武器庫』に籠って手入れをしていたんだけど、ついうっかり出口を間違っちゃってね。出口を間違った事に気付いた直後に、ふと君達の声が聞こえてきたって訳さ」
「ま~たやったのか……。あのですねぇ、私がちゃんと全ての出口に貼り紙しましたよね!? それをちゃんと見てるんですか!?」
「そもそも貴方がいきなり武器庫に消えるかr……」とまでが優里言いかけたところで、爽器が彼女の口許に人差し指をあてて、ストップをかけた。
「お説教はその辺で。まずお客様に挨拶しなくちゃ」とだけ言って、優里から視線を外し、私の方に顔を向けた。
「見苦しいところを見せてしまったね。僕は『廃鉄ブレイカーズ』の代表をしている『武塚 爽器』だ。彼女は君の案内人でもあり、僕の面倒を見てもらっている『橘屋 優里』ちゃんだ」
「そういえば、施設の紹介ばかりで、私の紹介を忘れていました……改めてよろしくお願いします」
爽器からの紹介で、思い出したように優里がペコリとお辞儀をした。
「こ、これはご丁寧にどうも……」
「この際だから、君の事も聞いておこうかな。ちゃんと闘器も持ってるし、たった1人でホルスを4体も撃退できるなら、破砕者として申し分のないスペックだしね」
「破砕者……?」
「あ、そこについては私から説明を。破砕者というのは、貴方も襲われたと聞いている、あの『スクラッパーズ』を討伐する者達の事です」
……それだけ聞けば、大体の事情は理解できる。
つまり、私はこれから最前線の戦場で、あの化物と嫌でも戦わなくてはならないということだろう。
『よく分かっていますね。理解が早いので、私の説明も必要なくて助かります』
その声が、私の右腕から聞こえた瞬間、2人の目の色が一瞬で変わった。
「これは驚いた、まさか人工AIを搭載した義手が実際にあるとは……」
「AIが搭載されている人も、稀に存在すると噂では聞いていましたが……実際に目にしたのは初めてです」
「わ、私はどうしてこんな義手をつけているのかも、どこで右腕を失ってこうなったのかも覚えていないのですが……」
それを聞いた爽器が、一瞬考えるような仕草を見せ、私にあることを聞いてきた。
「なるほど、それなら君に1つだけ聞こう。君、自分の名前を覚えているかい?」
名前……? そうだ、私には――――思い出す名前がないじゃないか。
「自分の……名前。私は、私の名前は……? 何か、何かわからないのか?!」
『メインサーバーを一括検索します……。検索の結果、所有者である貴方の名前についてのデータは、1つとしてヒットしませんでした。私も貴方の名前を存じ上げません』
「……やっぱりね。そんなことだろうと思ったよ。どうやら君は、僕と境遇がよく似ているようだね。実は僕も、前の記憶がないんだよ。不思議なことに、スクラッパーズと戦うような能力を持っていた覚えがないことだけは、妙にはっきりと覚えていてね」
「あぁ、それと1つだけ。この世界にいる人間は、どうやら1回死んでいるようなのです」
「えっ!? 1回死んでる!?」
「別に驚くことでもありません。あくまで予想ではありますが、スクラッパーズに殺された者が、何かしらの力によって生き返っていると推測できます。記憶に関しては、死ぬ直前までの記憶を持っている者もいれば、代表や貴方のように、違和感しか感じない者。もっといけば、その違和感すら感じない者もいます。その人によって、記憶の有無は千差万別です」
「……ってことは、自分の名前を自分で考えるってことでしょうか?」
「ご名答。君、察しがいいね。僕もこの名前を自力で考えたんだ。人生何事も経験だよ」
「は、はぁ……」
そうは言っても、自分で自分の名前を考えるハメになると、どこの誰が想像しただろうか。それでもやはり、名前が無ければ、他人との付き合いも上手くいかないだろう。
……だが、急に人の名前なんて、簡単に思い浮かぶわけがない。ましてや自分の名前である。これから一生付き合っていく名前を考えるとなると、慎重になって当然だ。
「どうするんだい? もし何も思いつかないのなら……僕がつけてあげてもいいけど?」
「い、いえ……流石に自分で考えます」
赤ん坊ならまだしも、物事をちゃんと考えられる年で、自分の名前を他人に丸投げなんてできない。……とは言うものの、何も自分を象徴する特徴なんて、そう簡単に見つかるものなのだろうか。
『ご主人、名前のない私から一言だけアドバイスです。ご主人は何のおかげで生き長らえたのかよくお考え下さい。……私と答えても一応は正解ですが、私よりももっと延命に貢献したものがありますよね?』
「何って、そりゃあブラッドグリードだとは思うが……! 剣士、そうだ! 『
『そういうふうに名前を考える手もあるということです。これからのことも考えて、覚えておくとよいでしょう』
『
「結構……っていうか、かなり安直な名前だとは思うけど、他に思いつく名前もないならそれでいいんじゃないかな」
「はい、これからはこれで通していこうと思います。あ、それと右腕……としか呼べないけど」
『はい。現時点で私に名前は無いので、それで反応するしかないのですが、そんな名前は拒否したいです』
「もちろん分かってるさ。今から君の名前は……闘器から名前をとって『ブラッグ』だ。それでいいか?」
『……自身の固有名称『ブラッグ』を認証。たった今から私は『???』から『
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