笑止千万

曲瀬樹

序文に代えて

 取るに足らない話です。ここでは物語は進みません。これを読もうという、物好きな暇人である偉大な読者のために、手短にお話を。


 ここには差し当たって三人の語り手がおり、各々が役割を持ってその位置に配されています。まず、読者であるあなたにはこの物語の舞台というのがきっとよくわからないでしょうから、それを説明するために、この世界の片鱗の取るに足らない個人的な事柄を、語り手がその目で見た通り誠実にお話しします。彼らには自分の見たものしかわからず、また彼らの知識は有限ですから、勤勉な読者には苦労をかけることもあるでしょう。しかし、人間なんて概して井の中の蛙なのですから、仕方のないことだと思いませんか?


 いえ、説教の皮を被った言い訳はここではもうやめておいたほうがいいでしょう。手短に、と言ったならば手短に。役者の一人が来る前に、ここが一体どんな場所であるかだけでもお話ししておきたいところですが、幸いなことに用意された役者は皆揃いも揃って話が長く、腹立たしいほどに舌が回るのです。ですから、後のことは後の人に、役者の仕事は役者にお任せすることにいたします。


 では、ほんとうに短いですがこのくらいで。またお会いできましたら、幸いです。

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