平和な異世界で始める「戦い」!
灰岳
第1話 プロローグ
ある梅雨の雨の日。
とあるアパート。
俺はある程度の戦を終え休憩していた。
サーバーからの轟音と熱を感じながら両手を後ろにつき頭を左右に回す。するとパキパキと首からクラッキングした。
乾いた喉を潤しに冷蔵庫に向かう途中、台所の水道で顔を洗っていると扉からゴンという音が聞こえてくる。
俺の扉だよなと考えている間もゴン、ゴンとまた何かが扉に当たったような音が響く。
怖気付きながら、扉をゆっくり開けるが小声で「はーい」と言いながら扉を開くも、正面には誰もいなかった。
下の方から子犬のような鳴き声が聞こえた。
そこには段ボールの中に痩せ細った子犬が一匹お座りをしていた。拾ってくださいと、置き手紙が広告紙の裏に油性マジックで書いてあり、貼り付けてあった。
「誰だよったく迷惑事押し付けやがって。」
子犬が一つクーンと鳴く。
「お前は捨てられて大変だな」
子犬が首をかしげる。
その犬の可愛らしさに負けた。
「よし入れ」
このアパートはペット禁止じゃ無いから、後でどこかにかある保護施設に連れて行くか。
そう思って俺は犬を部屋に入れた。
まずは風呂に入らせた。一切暴れる事なくお座りをしている。まず手にシャンプーを付け泡立たせてから頭を洗うと、茶色黒い泡が立った。すぐさま人肌の温度のシャワーで流した。
その後風邪をひかないようにドライヤーで優しく乾かした。あまり熱を帯びないように。
綺麗になったとこで次は餌だ。
ドックフードは段ボールの中に入っていた。
それと、皿に水を入れて差し出した。
モリモリ食べている。食べ盛りのこどもの様に。
「ふぅ。ようやく盈虧を養えた。」
俺と犬しかいない空間に女性の声が聞こえる。
「だっ、誰だよ。」
まさしく台本通りのような答え方をした。
すると犬から脱皮するかの様に、体の中心から裂きでてきた。得体のしれない何かが。
そこからは女性が出てきた。
美しい天使の輪が反射する白髪の女性が。
灼眼の輝きが血を解釈させるようなに。
しかも裸の 巨乳の 謎の光を帯びて。言葉も出ない。唖然だ
「何を驚いている?」
急に子犬の体内から現れた相手が神だと意味不明な言動をしていたから?それとも仮に俺と彼女(自称神)との時間の流れに差があってそれに追いつくこと自体許されない現状があるのに対し驚いていることを無自覚に認識しているってんなら俺は考えるのを諦めるぞ。
「創世の威光め。私を鬼畜生の姿にしおって」
「あのー。話の意図が全くわからないんですが。ドックフードで盈虧を養う?マジですか?」
「それはただのドックフードでは無い。まずドックフードでは無いがな。普通の人間が食ったら死ぬぞ。そして貴様私の事を知ったか。知ってしまったか。まぁ貴様のような下賤なる魂に認知されようとどうという事は無いのだが、致し方ない。ま、アイツが微小な魂の歪曲を感じ取り駆けつけられたらコトだからな。貴様は今から天に抗う私の計画を邪魔する障害になった。よって貴様を今殺す。」
鋭く冷たい獲物を狩る視線が俺に刺さる。
「!ちょっとやだなー。何をおっしゃるんですか?何も言いませんよ。」
愛想笑いと身震いが気持ち悪い程俺の耳に入って来る。誰だよ鬱陶しい。はっきり言って耳障りだクソ野郎!
「心配は無用じゃ。私は死神。死を操る者。
痛みなく逝けるぞ。」
すると死神は両手を挙げた。何かを握りしめているようでもあった。まるで竹刀か刀を持っているかのような構えだ。だけれどその握っているであろうなにかは、俺には見えなかった。
「手を斬った。次は足だ。ゆくぞ。」
えっ?手を切ったと言ったのか?いや両手はちゃんとあ、る
目を見開き驚愕した。両腕が無い。痛みなく。風すら動いていないこの部屋で。肩からあるはずのものがない。
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、死にたくない!!!!どうして俺がこんな目に合わなくっちゃいけないんだ、助けてよ神さま!
人生で一度も拝んだことの無い神さまに対し俺は必死に懇願した。
もちろん助けなんて来ないのは分りきっていた事だった。
でも俺はそんな痛みを負いながら思った。
優しい抱擁。そして、今までの人生の中で死は、一番の快楽だって事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます