第234話 ◆エンマ大王VS霊媒師陽子

◆エンマ大王VS霊媒師陽子


ミキと陽子が乗ったLCCグレープエア航空104便は、どうやらエンジントラブルで墜落してしまったようだ。


ようだと言うのは、二人とも墜落した記憶が無いからである。


そして今は、地上100mの高さのところで、ふわふわ浮いている。


ねえ、陽子さん。  落ち着いてあたしの話しを聞いてくれる。


なあにミキちゃん?


これから下に降りるけどあたし、此処がどこか分かった気がするんだ。


えーと どこなのかしら?  陽子はミキを不安げに見つめる。


残念ながら、あたしたちは地獄に来てしまいました。


まって、陽子は地獄に落ちるようなことは、人生でたった一度もしたことがないわよ。



はい! それはウソでーっす!


陽子さん、ここではウソを言わない方がいいよ。  なにしろ此処には、こわーいエンマ大王がいるからね。


やだ、ウソなんて言ってないじゃない。


はいはい、後で結果が分かると思うけど、今のは致命的だったねー。


ミキのこの言葉に陽子はほっぺたをぷくぅっと膨らませる。


それを見てミキは、アラサーなのにちょっとカワイイと思った。



***


ニューヨークに行く予定が、まさかの地獄ツアーになってしまった


ここは観光地ではないのだが、ミキにかかれば・・・



陽子さん、こっちこっち。  ここが地獄のウォール街だよ。


へぇー ほんとうに立派な建物が並んでるわねー。


うん。 それでね、これからエンマ大王に会いに行こうと思うんだけど、そこに厄介な奴がいるんだ。


そうなの?


ケルベロスっていうんだけど前にあたし・・そいつに噛みつかれちゃって・・・ (消化されてうんちになったことは内緒にしておいた)


まぁ


なにしろ、獰猛なヤツだから陽子さんも十分気を付けてね。


わかったわ。


しばらく歩くと大きな地獄門が見えて来た。


立派な門ねぇ。  陽子が感心しながら門を見上げている。


これって、パリの凱旋門みたいでしょ。


えーーっ  ちょっと無理があるんじゃない?



二人がワイワイ話しながら門をくぐろうとすると・・



ガルルルルゥ


でたっ!  ケルベロスーー!   陽子さん危ないから下がって。


あらあら 可愛いワンちゃん♪   ほら、こっちにおいで♪


ギャー 危なーい!



くぅ~ん  


よ~しよし、いい子ね~。  陽子はケルベロスの3つの頭を代わり番こに撫でている。


あり?  懐いた?


うふふ この子頭が3つもあるのね。 カワイイから帰りにお家に連れて帰ろうかしら。


マジ?  いやダメっしょ!  エンマ大王に殺されるってば。


あら、あたしたちって死んでるんじゃなかったっけ?


えーっと・・・  例えよ。  た・と・え!



ケルベロスが陽子に懐いてしまい、地獄門でしばし遊んでいたので時間を費やしてしまった。


陽子さん、いい加減に行かないとエンマ大王がお家に帰っちゃうよ。


まあ、それは大変。 ミキちゃん、急ぎましょう。



あれ? 前に来た時より建物が新しくなってる。


陽子さん、この建物の中でエンマさまが死者の生前の罪に対して判決を下すんだよ。


へぇー そうなのね。


さっきあたしが言ったことに注意してね。


えーと なんだっけ?


だからー ウソは絶対に言わないこと!


あー はいはい。



ミキと陽子は、まるで自分の家のように建物の中へと入っていく。


そして長い廊下を通り幾つもの部屋を抜けて、ついにエンマ大王の判決の間に着いた。


あっ いたいた。 陽子さん、あそこにいるのがエンマ大王だよ。


おーい。 エンマ大王ー。 お久しぶりでーーす。


ミキは馴れ馴れしくエンマ大王に声をかける。  ちなみにエンマ大王に会うのはこれで2度目である。



おぉ ずいぶん早く着いたな!


あのー キャサリンを寄越したのは、エンマ大王さまですよね?


いかにもそうだが。


最初に言っておくけど、アメリカ旅行に行くところだったから、すっごく迷惑だったんですけど!  


いやー すまんすまん。  ちょっと復活の神に頼み事があったのでな。


なにせここには死ななきゃこられないので、キャサリンを遣わしたのじゃ。


えーと あたしは別に死ななくても此処に来れますけど?


あっ・・


エンマ大王さま。 いま、あって言ったよね?


いや・・その・・なんじゃ・・ ちょっと思い違いをしとったようだな。


ひどい! あたしは、そんなことで死んだの?



ちょっと! あたしはその巻き沿いで死んだんですけどー。  それを聞いた陽子がプンスカ怒り始める。


まだ彼氏もいないし、結婚もしないうちに死ぬなんて・・ あんまりだわ!


いや・・ 二人には悪い事をしてしまったな。


そこの女。 詫びとしてなんでも一つ望みを叶えてやろう。


うわっ 大王さま、それは絶対にダメだって!



うふっ うふふ  陽子とっても嬉しい♪


しまった、前言撤回じゃ。


あらやだ、大王さま。 ウソは吐いたらいけないのよ♪  大王さまがウソを吐いたなんて噂が広がったら地獄はもう終わりよ。


さすがの地獄の大魔王様も口では陽子に敵わない。



あちゃー  だから言わんこっちゃない。  ミキは既にこの後、陽子が何を言い出すかハラハラドキドキしている。


ううぅ 仕方が無い。  早く言いなさい。   大王さまは苦虫を噛み潰した顔をしながら陽子を促す。


  

それじゃあ・・  陽子の目がキラキラ光る。


ごくっ  ミキの心臓はもうバクバクである。


あたし年齢が巻き戻せる能力が欲しいわ♪


うわ とんでもない要求キターーーー。  ミキはこのやり取りが少し楽しくなって来ている。


そ、それは不老不死のことか?


エンマさま、それは違うわ。 例えば陽子が60歳のおばあちゃんになった時、若返りたいと思ったら何歳でも若返ることができる能力よ。


いやいや、それってある意味不老不死とおんなじやん!  ミキは心の中で突っ込む。


よかろう。 その願い叶えてやろう。


ええーー  いいんだ?    ミキはあっさり承諾したエンマ大王をあきれ顔で見る。


きゃー 陽子嬉しい♪


こりゃあアラサー女の勝利だねー。


ちょっと、ミキちゃん。 アラサーは余計よ!


あー ごめんごめん。



ところで、エンマ大王さま。  あたしに何の用だったの?


おっと、そうだったな。


実は・・・・



この後、エンマ大王はミキにとんでもない依頼をするのだったが・・・

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