第202話 ■千織の転生(タイ編 その5)
■千織の転生(タイ編 その5)
結局ミキも陽子も、朝まで目が覚めなかった。
ただ、目が覚めたのは、ほぼ同時だった。
ミキの目覚めた気配で、どうやら陽子も起きたようである。
「うふふ、わたしミキさんを抱き枕にしちゃったわ」
「陽子さん、お母さんみたいでした」
ミキは陽子の腕の中でくるりと体の向きを入替える。
陽子とミキの身長差もあり、向きを変えたミキの顔は陽子の胸に埋まる。
ドキドキドキ
『や、やわらかくて気持ちいい・・・』
きゅうぅー
陽子が少し力を入れてミキを抱きしめてくれる。
ムググゥー
『朝から、ちょー幸せー♪♪』
「ねぇ、日本に帰ったらミキさんをわたし専用の抱き枕にしちゃおうかしら」
「そ、それはダメです。 気持ちいいけど・・・ あわわ、あたし何言ってるんだろ」
「そうだわね。 ミキさんには素敵な旦那様がいらしたものね。 さぁ、もう起きましょうか。 お腹も減ったでしょ?」
ギュルルルーーー
途端にミキのお腹が大きな音を立てて鳴った。
アハハハ
うふふ
二人は顔を洗い着替えてから朝食を取りにレストランに向かった。
レストランはホテルの最上階にあり、バンコク市内の様子が一望できる。
朝食はミキの大好きなバイキング形式だった。
何しろ、いろいろな物が好きなだけ食べれるのが嬉しい。
日本の旅館だと御代わりができるのはご飯だけのところが多い。
もちろん白米は大好きなのだけど、白米だけを何杯も食べるのは味気ない。
ミキは相変わらず、食べてはお代わりを繰返すので、傍から見てもお腹が膨れているのがわかる。
何しろ後からレストランにやって来たイギリス人の夫妻に、おめでたですかと尋ねられて焦ったくらいだ。
「ふぅ、食った食ったぁ。 もう、今日一日分くらい食べちゃったよ」
「やだ、ミキさん。 これから出かけるのに大丈夫?」
「平気、平気。 昼食までのいい運動になるよ」
「まぁ・・」
二人は一旦部屋に戻って、今日の予定を確認することにした。
「陽子さん、あたしの元々の計画だと今日は、xxとxxの観光をする事になってたんだけど、どうします?」
「そうねぇ、わたしは頼まれて来たから、特に見たいところは無いわ」
「頼まれたって、どういう事ですか?」
「あら、いけな~い。 わたしとしたことが」
「もしかして、鋭二さん?」
コクッ
陽子は舌を出しながら小さく頷いた。
そう、鋭二はミキがまた何かをやらかすと思って、陽子にミキのお守りを頼んだのだった。
「まったく、鋭二さんてば、何時までも子供扱いするんだから」
「ミキさん。 このことは内緒にしておいてね」
「え、えぇ。 でも・・」
「お願い。 だって次からわたしへのお仕事の依頼がなくなってしまいますもの」
「し、仕事だったんですか・・・」
「うふふっ。 そっ、お・し・ご・と」
どうやら例(霊)の一件以来、鋭二の陽子への信頼と評価は高いらしい。
「もうどうでもいいや。 それより陽子さん。 早く出かけましょうよ♪」
ミキは、もうバンコクの観光の方にスイッチが切り替わったようである。
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