第191話 ◆ミキ消化される?
◆ミキ消化される?
「3日間で50万人ですか・・・そんなぁ・・・」
ミキは大王の顔を見ながら途方に暮れる。
「いいな。 それでは頼んだぞ!」
地獄の大王にギロリと睨まれて断れる者は大神ぐらいだろう。
帰り道、ミキはいったいどうやったら3日間で50万人も復活させることを考えながら歩いていたが、いいアイデアも無く憂鬱であった。
テクテクとひたすら入って来た地獄の門を目指して無言で歩く。
はぁ~
たまに深い溜息を吐く以外は、黙々と歩く。
一方、こちらは死神キャサリン。
「アイヤーしまった。 大事な事言うの忘れてたアルヨ!」
キャサリンはミキに大事な事を教えるのを忘れたことに気が付くが、もうミキは地獄の門に丁度さしかかっていた。
実は地獄の門番、ケルベロスは冥界に入る者には何もしないが、冥界から出て行こうとする者には容赦しないのだ。
「よっ!」
ミキは門を入る時、尻尾を振っていたケルベロスに気軽に挨拶をして通り過ぎようとした時。
ガルルーー
ガブッ
ミキは、あっと言う間にケルベロスに一口で食べられてしまった。
「アイヤー 手遅れだったアルカ!」
タッチの差で地獄の門へ現れたキャサリンはペロリと舌なめずりをするケルベロスを見ながら、その場に立ち尽くす。
「仕方ないネ・・見なかったことにするアルヨ」
そう言い残し、キャサリンはパッと消えた。
★
ミキは気が付くとケルベロスの胃の中に居た。
ケルベロスの牙が鋭かったのだろう。 どうやら上半身と下半身が泣き分かれているようだ。
「あ゛ーー もう! 体が上手く動かないよ!」
ミキは神様である事を自覚しているので、北の神のローズ風呂の時のように痛みは感じないが、もがいているうちにケルベロスの強力な胃酸で体がどんどん溶かされて行く。
『こ、これは、早くしなけれりゃ、ヤバイぞ!』
ミキは食道を通っているあたりから、何度か瞬間移動を試みているが脱出できていない。
気ばかりが焦って、良い考えが浮かばない。
『あ゛ーーーぁ』
ミキは5分足らずで胃の中で完全に消化され、十二指腸の方に流されていった。
流動体になっても平気なのは、流石に神様である。
どうやら肉体は、要らないらしい。 と言うか好きに合成すれば良いのだろう。
そう考えると東の神が白い犬やイケメンに変身していたのも納得がいく。
でも、18年間使ってきた自分の肉体が無くなってしまったと思うとなんだか悲しくなったし、だんだんムカついてきた。
『わざわざ呼び出された上に、犬に食べられて最後は糞フンかよ!!』
ケルベロスの腹の中は、どうやら力が使えないようなので、ムカついても暴れることは出来ない。
仕方が無いので、ミキは溶けた体のまま寝て待つことにした。
★
ほかほかと体が暖かくなり、ルナと温泉に入っている夢を見ていたが、瞼の向こう側が明るいので目が覚めた。
辺りを見回すとケルベロスのお尻が見える。
「あっ・・と言うことは・・」
そう、ミキは糞となって排泄されていた。
惨めだった。 この世に生まれて、まさか犬の糞になるとは思わなかった。
『クソーー! ケルベロスのヤツめ!』
体外に排出されたため、ミキは力が使えるようになっていたが、自分自身がホカホカと暖かく意外と気持ちがいいのに気が付く。
で、しばらくの間、ウ○コままでいることにした。
よく考えてみれば、貴重?な体験である。
そうは言っても『でも誰かに踏まれたらヤダな』とミキは思うのであった。
次回、「踏まれちゃった!」へ続く
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