第165話 ◆禁断の果実(その2)
◆禁断の果実(その2)
さて、ミキは「忘却の実」を口にしたため、すっかり記憶を無くしてしまった。
それに「復活の神」の怒りをかってしまい、囚われの身となっていた。
ミキには罪の償いとして、「忘却の実」を大きな石桶で絞り、果汁を作り続けるという過酷な作業をひたすら続けなければならなかった。
天国では昼の時間が恐ろしく長く、夜はあっちの世界とほぼ同じくらいである。
従って長時間労働などと言うレベルのものでは無く、作業をひたすら続けるミキは、まるで地獄の亡者になり下がったかのようだった。
★
一方、大沢家では、リビングで鋭二とルナが突然消息不明となったミキについて話しをしていた。
こちらの時間では、ミキが消滅してから既に1日が経っていた。
ティンカーベルの仕事はエミとアヤがこなしており、スケジュールに支障は出ていない。
ルナは心配して真っ先に父親のもとに行き、ミキが一旦消滅した後、復活した所までは掴んでいたが、その後の情報がプッツリと途切れている。
「わたしの呼びかけにも返事が返ってこないのです」
ルナは天国での調査状況を説明しながら、心配そうに言った。
「ミキが黙って家うちをあけるなんて事はいままでも無かったし、きっとまた何か厄介な事に巻き込まれているに違いないんだ」
鋭二の頭には、ミキが巻き込まれた過去の事件の数々がよぎる
。
「でも、お母さんは神族の力を持っているので、命に別状は無いと思います。 それに、窮地に立たされている緊迫したような気配は感じません。 何れにしてもお母さんは、こっちの世界には戻ってきていないと思います」
「それじゃミキは、まだ天国に?」
「たぶん・・・わたしが、もう一度天界に行って探してきます」
「僕も一緒に行けないかな?」
鋭二がテーブルから身を乗り出してルナに訊く。
「残念ですが、それは無理です。 天界に着いた途端、鋭二さんは死んでしまいます」
「やはりだめなのか・・・」
鋭二はガックリと肩を落とす。
「それじゃ、わたし行きますね」
ルナは瞬時に鋭二の目の前から消える。
★
ルナは瞬時に天界の東の神殿に移動し、真っ先に父親の下に向かった。
「お父様。 お母様の行方について何かわかりましたか?」
「ふむ。 どうやら「復活の神」の処に囚われているようだ。 あの女、折角復活させてやったのに、また何かやらかしたに違いない。 しばらく罰ばつとして放っておけばいいんだ」
「復活の神・・・」
「ああ、セレーナーは知らなかったのだな。 西の大地で、死者の復活・・つまり輪廻転生を司る神でね。 なかなか恐ろしい力を持ったやつだ」
「わたし、これからお母様を許してもらうように頼んできます」
「それは、ならん!」
「どうしてですか? お母様が囚われているのですよ!」
「神は他の神が行っていることに干渉してはならない掟があるのだ!」
「それじゃあ、お母様は・・・」
「復活の神が許さない限りは、どうしようも無い」
「そ、そんな・・・」
ルナは自分の握り締めた指が震えているのを感じながらも
ただその場に立ち竦むしかなかった。
次回、「禁断の果実(その3)」へ続く
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