第154話 ◆モデルになりたい女神様
◆モデルになりたい女神様
ミキがルナを探しだしたのは、30分後であった。
何やら人だかりがしているので、野次馬根性が人一倍のミキは素早く反応した。
その人混みは、果たしてルナを取り巻くスカウトマン達であった。
「ちょっと! あんた達! そこをどきなさいよ!!」
ミキは女神様の姿に戻っているルナを睨みながら、スカウトマン達を押し分けてルナめがけて進む。
ルナは、しまったと言う顔をしたものの、直ぐに素敵な笑顔になる。
これが女神の必殺技なのか・・・
ズキューーン
そんな銃声が聞こえてきそうなくらいの笑顔であった。
ルナの周囲にいた者は全員、その銃声にハートを撃ち抜かれていた。
当然ミキもやられた。
が、ミキはさすがに母親である。
ルナの腕をむんずと掴み、家へ瞬間移動したのであった。
・・・
・・
・
リビングには重苦しい空気が漂っていた。
「ルナちゃん。 黙っていないで、どうしてあんな事になっていたか、きちんとお母さんに話しなさい!」
「・・・」
ルナは下を向いて黙ったまま、拗ねたような顔をしている。
「わかったわ。 それなら今日の夕食は抜きにしますからね!」
さすがにミキは自分のDNAの弱みを知り抜いている。
それはミキのDNAを受け継ぐルナにとっても最大の弱点であるのだ。
が、
「・・・」
ルナは結構、強情だ。 これも母親に似たのかも知れない。
「ふ~ん。 それなら春巻は、みんなあたしが食べちゃうからねっ!」
バッ
春巻と言うキーワードにルナが素早く顔を上げる。
「ミキちゃん。 ず、ずるい」
「それじゃ、話してくれるのかな?」
「うん。 そのかわり春巻、たくさん作ってね」
そう言ってルナは、またしても素敵な笑顔を作った。
ズキューーン
「うっ・・・」
今度は、ミキは女神様の笑顔を独り占めしてしまったため、その威力は凄まじかった。 はっきり言って想像を絶する破壊力だ。
ミキのハートは粉々に砕け散ってしまったかのように、キュウゥンとなる。
『これでムギュでもされたら溶けて無くなっちゃうかもぉー』
はっ?
『いや、いや、いや。 それじゃあのスケベな神様みたいじゃないか!』
ミキは、神様の顔を思い浮かべて、思わず正気に戻る。
「うぉっほん! は、春巻は作ってあげるから、理由を先に聞かせてくれる?」
「ミキちゃん。 ダメよ。 春巻が先よ」
またしてもルナが微笑む。
ズキューーン
この連続攻撃にミキはあっさりと落ちる。
「わ、わかったわ」
後のちに、この攻撃方法の事をミキは「女神のHarmagedonハルマゲドン攻撃」と名付けた。
「ミキちゃんが作ってくれる春巻は、やっぱり最高においしいです」
女神様からお褒めのお言葉もいただくが、ミキは2回もハートを撃ち抜かれてしまったので既にヘロヘロ状態であった。
従って、今日はこれ以上、この事について追及するのは止めにした。
・・・
・・
・
そして次の日の朝。
ミキが起きると、ルナの姿がどこにもみえない。
ミキが目を閉じて、ルナの事を想うと渋谷駅のハチ公像の前にルナが立っているのが見えた。
『あの娘・・また黙って渋谷に・・・』
ミキは直ぐに着替えて、自分も渋谷のハチ公前に移動する。
「ルナ! あなた、ココで何してるの?」
幸いルナもココに来たばかりのようで、まだ周りに人も集まっていなかった。
「今日は、理由をちゃんと話してくれるよね?」
ミキはルナの正面に立ち、両方の肩に手を置き、穏やかに話しかける。
「あっ、ティンカーベルのミキ? それともエミ?」
「ほんとだ! 本物だーー!」
ミキの姿に近くの若者達が気付く。
「ヤバッ!」
ミキは、ルナの肩に手を置いていたので、二人同時にその場から消える。
「おぉーーっ、渋谷マジック!!」
若者達は目の前からあまりにも忽然と消え去ったため、夢でも見ていたのかと思ったようだ。
・・・
・・
・
「で、いったい、あそこ(渋谷)で何をしていたの?」
再びリビングでミキによる事情聴取が始まる。
『娘(女神)の教育は、しっかりしなくてはいけない。 何しろ神様を間違った方向に育てては絶対にいけない』
そうミキは心の中で想った。
その想いはルナの心の中に、しっかりと伝わる。
「ミキちゃん。 わたしはモデルさんになりたかったの。 だから渋谷にスカウトしてもらうために行ったの・・・」
「モデルって? ファションモデル?」
確かにルナのスタイルと美貌なら、直ぐにトップモデルとして活躍できるだろう。
「そうです」
ルナは自分の決心が伝わるように、しっかりと頷く。
「でも何でモデルになりたいの?」
「だって向こうの世界の着るものって、白いロングドレスだけしかないんですもの」
「あー 何となくわかる。 あの白くてヒラヒラしてる。 そっか。 絵画に描いてあるのは、あながち間違いじゃないって事かぁ」
女神様もやはり女の子なんだとミキは思うのであった。
「ねっ。 だからわたし、モデルになりたいの」
「う~ん。 でも、あなたは月の女神様なんだよ。 その役目は、いったいどうするつもりなの?」
「それは、わたしの他にも月の女神は、何人もいるから大丈夫だと思います」
「な、なんだ。 そうだったの? だけど問題は神様だねぇ・・・ あたしが言ったってダメだし、また石にされるのがおちだよなぁ・・・」
ミキは妙案無しと言う顔をしながら言う。
「お父様の方は、わたしが何とかしてみます」
「なんとかっても・・」
「たぶん大丈夫だと思います」
ルナは何やら自信がありそうな目でミキを見詰めながらそう言った。
次回、「ルナVS神様」へ続く
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