第150話 ◆ミキ、親権で神様と揉める

◆ミキ、親権で神様と揉める


ミキは大沢家で一番陽あたりの良い部屋をルナの部屋にした。

一緒に生活し始めると、日に日に母性本能に目覚めて来るような感じがする。

なんだか世話を焼きたくて仕方が無いし、いつも傍にいたいのである。


それで最近、歌手やバラドルの仕事の方は、ほぼ放棄状態が続いている。

ルナの部屋の内装は、二人で都内をいろいろと回り、淡いピンクを基調とした女の子らしい部屋に改装した。

天上界の東の神殿の殺風景な部屋とは大違いで、本人もたいへん気に入っている。


掃除や洗濯、料理なども一緒にしながら、こっちの世界の事などもいろいろ教える。

清水さんは最初のうち、少しヤキモチを焼いていたが、3人でワイワイやってるうちに清水さんも、すっかりルナのファンになってしまった。

何しろ女神様だから、一緒にいるだけで幸福感で満たされるのだ。


ルナはテレビ番組やインターネットに興味津々で、一人の時間の大半はどちらかに夢中になっている。

女神様なのに、昼ドラやお笑い番組、月9などが特に好きなようだ。 これも人間界の文化の勉強の一つになるからとミキは好きにさせていた。

1ヶ月ほど経ったある日のお昼少し前、それまで快晴だった空が俄かに黒雲に覆われ、稲光までし始めた。

「うわっ、清水さん。 急いでお布団入れて!」

「はい、かしこまりました」

布団を部屋に仕舞い込んだ途端。

ピシャ

ガラガラガラ  ドーーン

眩しい閃光と雷鳴と共に近くにカミナリが落ちる。


キャーー

ミキはカミナリが大の苦手である。

「ひぇー くわばら、くわばら」

ミキは一目散にリビングのテーブルの下へ緊急避難し、目を瞑って頭を抱えている。

どうやらカミナリは一発だけで、治まったようである。

ミキは、そ~と目を開けた。

と、隠れたテーブルの脚と脚の間に、人の足が見える。

「清水さんたら、すね毛の処理はちゃんとしようよ!」

「ミキ様、わたくしの足は綺麗ですけど?」

布団をミキ達の部屋に運んでいた清水さんが、ミキの部屋から答える。


「ありっ? それじゃ、このモジャモジャ足は・・・」

ミキがそっと目線を上に上げると、そこにはイケメン姿の神様が立ってミキを見下ろしていた。

「げっ、 と、突然の訪問は失礼だろう!」

「何を言うか! 娘を誘拐しておきながら!」

さすが神様が怒っていると、その声だけで部屋がビリビリと振動する。

ここで迫力負けしたらダメだ! ミキはそう思ってガバッと立ち上がった。


ドガッ

ぐぇ

ミキはリビングのテーブルに思いっきり頭をぶっつける。

「痛っーーーー!」

ミキは、思わず神様の前でひざまずき、頭を撫でる。

「今のは、軽い罰バツだ」

あまりの痛さにミキの目は涙目になっている。

「な、なによ! あたしは誘拐なんてしてません! それに、ルナはもう天上界には帰りたくないって言ってるの! だから、あたしが責任を持って、ルナを育てます!」

「だまれ! 人間ごときに神聖な神族の何がわかると言うのだ」

「でも、ルナは、あたしの娘でもあるのよ!」

「ルナ! 部屋から出てきなさい! 直ぐに天上界に帰るぞ!」

「あんたねぇ! 人様の家に勝手に入って来て好き勝手やってんじゃないわよ!」

そう言うとミキは、神様のモジャモジャのすねにガブリと噛み付いた。


あっ、イタタ

神様は、ミキの奇襲に驚く。

「へへんだ。 これはミキ様から、神様への罰バツじゃ~!」

神様の目は怒りのために、真っ赤になる。

「ちょ、ちょっと待った! 神様なのにこんな小さな事で、そんなに剥きにならないで・・」

ミキが言葉を言い終える前に、なんとミキの姿は石に変わってしまった。

「お、お母様・・・」

ルナが真っ青な顔になって震えている。

「セレーナー。 さぁ、来るんだ!」

神様は、ルナの手を掴むと二人は一瞬で消えて居なくなった。

ミキの部屋から、そっと覗いていた清水さんが、石になったミキに駆け寄る。

「ミキ様、ミキ様。 たいへん、どうしましょう!」

清水さんは、ミキの足元にしゃがみ込み途方にくれたのだった


次回、「ルナの反抗」へ続く

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