第140話 ◆ミキ、神様に気に入られる(その2)

◆ミキ、神様に気に入られる(その2)


ミキ達は鎌倉での取材を終え、一路箱根に向かう。

今日は、もう夕方なので旅館(露天風呂と夕食)の紹介用の収録だけで残りは翌朝からとなっていた。


ここの旅館の露天風呂は、広さが売りである。

むろん天然温泉なので、それなりの効能もある。

このお風呂の取材で、ミキはひとつだけ気がかりがあった。

そう、神様。

あの後、白い犬は、どこにも姿を現していない。

かと言って、あのスケベ神が露天風呂を見逃すわけが無い!

きっと、どこかで覗いているに違いないのだ。


白い犬の姿なら痴漢容疑で捕まることは無いのだし、騒ぐとかえってこちらの頭がおかしく思われてしまう。

「不利だ。 圧倒的に不利な状況だ!」

それに大仏様にだって変身していたくらいだから、それこそどんな姿に変えてミキたちに接近しているか、わからない!

もしかしたら、露天風呂自体が神様かも知れない。

そう思ったら、何だか楽しみだった温泉も入るのが憂鬱になってきた。


「でも、あの神様には、命を救ってもらったしなぁ・・・」

はぁ~

「ちょっと。 お姉ちゃんたら。 さっきから何を一人でブツブツ言っているの? もうそろそろお風呂に行かないと。 スタッフさんが待ってるよ」

「う、うん」

「早く、この水着を着て!」

「えっ? 水着?」

「そうだよ! 肩紐が無いタイプだからね。 その上からタオルを巻くんだよ」

「そっか、水着か」

ミキは、これでひと安心した。

自分はともかく、アヤも危険?にさらされるので気になっていたのだ。

水着を着けているのなら覗かれたって、どおって事は無いじゃないか。

案の定、露天風呂の収録では何事も起こらなかった。

それはそれは、不気味なくらい・・・

・・・

・・


チチチチ

チュン、チュン (お決まりの朝の表現ですみません)

さて今日は、芦ノ湖や大涌谷などの観光スポットを巡り、最後に箱根登山鉄道に乗って、沿線の紫陽花を収録し取材終了の予定である。

朝食はスタッフさん達と一緒に、旅館のバイキングである。

食いしん坊のミキは、プレートに乗り切れないくらい、いろいろな物を詰め込んでテーブルに戻ってきた。

「う~ん。 おいしいね~」

ミキが、パクパク食べる姿は、まるでギャル○根のようである。


「そんなに食べて大丈夫なの? 絶対に太るよ!」

アヤが呆れたようにミキの食べっぷりを見ている。

エミもアヤもミキのクローンであるが、性格は全く違うし二人とも、いたって少食である。

「ふ~ 食った食った」

ミキは中学生まで男だったが、エミとアヤは女の子になった後のミキのDNAを受け継いでいるので、その辺に相違点があるのだろうか。

ここは高嶋教授に是非聞いてみたいところだ・・・


ブッーー

食後のコーヒーを飲みながら、何気なく隣のテーブルを見たミキは思わずコーヒーを噴出す。

「ちょっ、 汚いなぁ。 お姉ちゃんたら、何やってるのよぉ~」

アヤは素早い動きで、既すんでの所で、コーヒーの飛沫をかわす。

この反射神経の良さは、高嶋教授の学習プログラムで身に付けたアヤ独自の能力である。

「ごめん、ごめん」

ミキは、ナプキンで口元を拭きながら、隣のテーブルに座っているイケメンの男を睨みつけたのだった。


次回、「ミキ、神様に気に入られる(その3)」

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