第30話 ◆出来ちゃった?

◆出来ちゃった?


さて、今日は午後からTV局で歌番組の収録予定が入っている。

久しぶりに午後からの仕事だったので、朝は鋭二さんとゆっくりしてから11時過ぎに家を出た。


お昼はサキと待ち合わせをして、TV局の食堂で食べる事になっていたのだ。

「あっ、ミキッ。 こっち、こっち」

サキはいつも元気いっぱいだ。


「おはよ~。 サキ」

反対にミキは新婚疲れなのか、声にいつもの元気がない。

「なによ~。 元気ないわね~。 わかった、夫婦喧嘩でしょ!」

「違うよ~。 ちょっと気分が悪くて。 車に酔ったのかな?」

「あら? ミキって、乗り物酔いしたっけ?」

「ううん。 でも乗ってきたタクシーの運転が少し荒っぽかったからかなぁ・・・」

「大丈夫? お昼食べるのやめよっか」

「あっ、少し休めば大丈夫だと思うよ」

「そう。 じゃ楽屋で少し休んでからにしよっか」

「うん。 ごめんね」


しばらく楽屋で横になっていたミキだったが、だんだん顔色が悪くなってきた。

「ミキ、大丈夫~? 顔真っ青だよ~」

「う・・・気持ち悪い~」

「ねっ、お医者さんに行こうか。 立てる?」

「うん。 何とか」

「もう、だいぶ時間も経ってるし、とにかく乗り物酔いじゃなさそうね。 ミキ、あんた道に落ちてるものでも拾って食べたんじゃないの?」

「・・・・」

「ごめん、こんな時に冗談なんか言って」

どんどん具合が悪くなっていくミキに、サキも心配の色を隠せない。


「今朝はフレンチトーストとコーヒーとサラダぐらいだし、卵も昨日買った新しいのだし。 鋭二さんは、大丈夫かなあ?」

「ミキ・・・あ、あなたマサカ・・・」

「えっ? あっ・・・ ど、どうしよう~ もしかしたら鳥インフルエンザ?」

ガクッ。 サキはおもいっきりずっこける。


「違うわよ! ひょっとしたら、赤ちゃんができたんじゃないの?」

「赤ちゃんって・・・・ あっ・・・あ゛ーーー!! 」

「しっ! 声が大きいって」

「だって・・・ どうして・・・」

「どうしてって。 もう夫婦なんだから、えっちぐらいしてるでしょ」

「そ、そりゃ~ その少しは・・・」

「だったら、出来ても不思議じゃないでしょう」

「でも、ちゃんと避妊してるし」

「ばかね。100%避妊できるなんてあり得ないのよ」

「サキ・・・ど・・・どうしよ~」

「取り合えず病院で診てもらうのが一番でしょうけど・・・」

「けど?」

「芸能人の女の子が産婦人科は、やっぱまずいっしょ!」

「そっか。 でも・・だったら、どうすればいいの?」

「う~ん。困った時は・・・」

「困った時は?」

「吉田マネージャに相談よっ!」



そういうワケで、頼りになる美奈子さんに相談中である。

「えっ? できたかも? って何が?」

「赤ちゃん」

「やだ、からかわないでよ! 結婚もしてないのに」

「実は・・・してるんです」

サキがミキを指さして、ニヤニヤしながら美奈子さんに報告する。

「なにぃーーーーー!!」

美奈子マネージャーの目がまん丸になる。


「しっ、美奈子さん。 声が大きい」

「だだ・・・誰と? い、いつ?」

「大沢さんと、二ヶ月前に・・」

ミキが恥ずかしげに、小さな声でボソボソ答える。

「鋭二? あんのやろーーー あたしの大事なアイドルに手をつけおってぇ・・」

美奈子マネージャーは鼻息で、あたりの物を吹き飛ばす勢いだ。


「違うんです。 わたしの方が先に好きになっちゃって・・・」

「ホントに入籍してるの?」

「ええ」 ポッ・・・

ミキは顔を真っ赤にしている。


「ふぇーーー。 それはマジ困ったわね~」

「すみません」

「でも、ほんとに出来たのなら、それはおめでたい事じゃないの。 困ったって言ったのはお医者さんをどうするかってことよ」

「やっぱり、そこいらの産婦人科はまずいですよね」

サキが神妙な顔で言う。

「う~ん。 市販の検査キットってのもあるけどね~。 いまいち精度に問題があるし。 いいわ、私がその筋をあたってみる」

「その筋って?」

「この業界のマネジャー達よ」

「なるほど~」

こうして他のマネージャーさんの紹介で、個人開業医で口が堅いお医者さんに診てもらったミキだが・・・ さてさて結果は・・・


次回、「副作用?」へ続く。

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