第8話 ◆お、オトコ?

◆お、オトコ?


「ほら、昨日はわたしの家だったから、今日はミキさんちの番!」

てなワケで、突然みどりさんが泊まりに押しかけてきちゃった。

ど、どーしよー! でも、どうしてうちがわかったんだ?


「それじゃ、おじゃましまーす。 さっ、早くミキの部屋に行こっ!」

「う、うん」

オレは仕方なく2階の自分の部屋に連れて行こうとして体が凍りついた。

イケネッ! 2階には、Hな本がたくさん積んだままじゃん!

「ちょっ、ちょっと待って。 やっぱ私、部屋片付けてくるからリビングで待っててくれる」

「あら、わたし全然気にしませんわよ」


え~い。 そっちは気にしなくても、こっちは大ピンチだって~の!

ダッシュで2階に駆け上り、山積みのH本を取り敢えずベッドの下に放り込む。

あとヤバそうなものは無いかな?

ぐるりと部屋を見廻すと、あちこちに問題を発見!


トン トン トン

ヤバイ。 階段を上ってくる足音がする!

「ミキーー。 どこなの?」

「ひゃ~ もぉ 待ってろって言ったのに。 あのオンナ~!」

コンコン

カチャッ

ノックとほぼ同時にドアが開き、みどりさんの顔がひょっこりと現れ・・・

「見っつけた~♪」

「キャー」

「何? ミキどうしたの?」

みどりさんは、いきなり大きな悲鳴をあげたオレを不思議そうな顔で見ている


「う、ううん。 な、何でも無い。 ちょっと驚いただけ」

「へ~。 ココがミキの部屋?」

「あぅ・・そ、そう。 ココがわたしの部屋よ」

「ふ~ん」

みどりさんは、興味津々で部屋をぐるりと見廻している。

「あらっ?」

ドキッ

「ど、ど、どうしたの?」

「これって、プロレスの選手?」

「あぁ。 それ? そうだけど・・」

「ミキって、たくましい男性が好みなのね」

どっと冷や汗が噴出す。


「ねぇ、ミキの小さな頃のアルバム見せてよ」

「あわわ。 アルバムって。 わたし写真嫌いだから無いの!」

「そうなんだ。 あら凄い汗よ。 ミキさん大丈夫?」

「えぇ、さっき急いで階段上ったから。 あぁ、暑い暑い」

「それにしても、この部屋のポスターって、女の子のが多いんだね」

そうだよ、オレは男だったんだから当然さ!

「そ、そうかな? ほら、長州や蝶野のポスターだってあるじゃない」

「でもやっぱり、何だか男の子の部屋みたいね。 クスッ」

ドキッーーー


そうだ。 みどりさんってお風呂好きじゃん!

お風呂に入ってもらってる間に部屋をもう少し片付けよう!

これってナイスアイデアかも・・・

「そうだ、みどりさん。 お風呂は?」

「お風呂は家で入ってきたけど。 ミキは、まだだったの?」

「そ、そうなの。 私はこれから・・」


チッ。 ダメか。

「じゃあ、ミキが入ってきたら? 私ココで待ってるから」

「と、とんでも無い!!」

「どうして?」

「えっ? やっ、やっぱ悪いじゃない。 来たばかりなのに」

「そんなことないわよ。 ほらっ、早く入ってきなさいよ。 汗もいっぱい掻いているし」

オレはみどりさんに背中を押され、あっと言うまに部屋の外に出されてしまった。

これじゃアベコベじゃないか!


兎に角、急いでお風呂に入ってこなきゃ。

あの娘ってば、何するかわからないからな。

急いで階下に下りたオレは、取り敢えず牽制球として、ひとつ手を打っておく事にした。

「母さん、みどりさんに飲み物とお菓子をだしといてくれる」

「はいはい。 いま用意してるところよ。 あらそう言えば美樹? あなた何してるの?」

「う~ん。 みどりさんが先にお風呂入って来なって言うから・・・」

「そうなの。 じゃあ、お母さんがお菓子とジュース持ってっとくわね」

「うん、お願い」


この後、オレが猛ダッシュでシャワーを浴びた事は言うまでもない。

一方こちらは、みどりさん。

「ふ~ん。 ミキの部屋ってほんとうに女の子っぽくないわね~」

ベッドカバーやカーテンはブルー系。 黒いミニコンポ。 剣道の竹刀。

サッカーボール。 プロレスの雑誌・・・etc

キョロキョロ辺りを見廻していた、みどりさんの視線がふと机で止まる。

すっと机の方に歩いて行くと一番上の引き出しに手がかかった。


とその時!

コンコン ガチャ

「なんにも無くて悪いけど、ゆっくりして行ってね」

牽制球が間に合った~。

みどりは少し慌てて、くるっと母さんの方へ向きを変える。

「あっ、おば様。 どうかお構いなく」

「うちのミキと仲良くしてあげてくださいね。 あの子、女の子の友達いないから」

「はい♪ わたしのほうこそ、よろしくお願いします」


ダッダッダ

バタン

「まぁ、ミキちゃん。 女の子なんだからもう少しオシトヤカニしなさいっていつも言ってるでしょ! おまけにバスタオル巻いただけなんてお客様に失礼じゃない!」

「ハァ、ハァ。 だって・・・待たしたら・・・ハァ、ハァ・・・悪いかなって」

オレは母さんが持ってきたジュースを見つけ、手にとると一気に飲み干した。

ゴクッ・・ゴクッ・・ゴクッ。 プハァーーー

「これ、ミキ! 何ですか言ってるそばから。 ハシタナイ」

「だって~ のどが渇いていたんだもん」

「だってじゃないでしょ」

「あ゛~。 もううるさいな! せっかくみどりさんが来てるんだから早くでっていってよ」

「はいはい。 じゃあ、みどりさん ごゆっくり」


パタンッ

母さんが出て行くと自分がバスタオル姿のままだったのに気が付いた。

何しろ嫌な予感がして、急いで駆け上がってきたしな。

「ミキ。 何か着ないと風邪ひくよ」

「うん。 ハッ、ハークション」

「ほら。 早くしないと大変」


風邪なんかひいたら大変だぞ。  医者なんか行かなきゃなんないし。

ブツブツいいながら洋服ダンスから、パンツとシャツを出して着替え始めた

そんなオレをみどりさんが不思議そうに見ている。

「ミキさん、それって・・・?」

「うん? おわっ!」

なんとそれは、いままでオレが使っていた男物のパンツとシャツだった。


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