第2話 ◆ミキちゃん誕生
◆ミキちゃん誕生
オレの名前は美樹。 正真正銘の男だ! ・・・う~ん男だったかも・・・
オレの両親は、ある研究所で染色体に関する研究をしている。
最近は妊娠後に希望したい男女へ産み分けるための薬を研究していて、完成間近のその試薬を我が家の冷蔵庫に保管していた。
(オイオイ・・何でそんなもんを家の冷蔵庫に!!)
そしてその薬をオレが夜中に、間違って飲んじまったってワケ。
父さん、いったいどうしてくれるんだ。 オレの人生。
さて、トイレに駆け込みオシッコをしようとしたオレだったが・・・
「ギャーーー無いーーーー」
「美樹。 おい、どうした!」
オレの大きな悲鳴を聞いて思わず、父さんがトイレの戸を叩きながら叫ぶ!
ぎぃ~。
ちょっとの間が空き、ゆっくり開いたトイレのドアから、半ベソ状態の美樹の顔が現れる。
「ねぇ、これ見てよ~」
指差すオレの指先に視線を移しながら、母さんが他人事のように、感心した声をあげる。
「まっ。 見事ねぇ」
「ほんとだ。 すっかり無くなってるな」
父さんも、いち研究者としての観察結果を素直に口にする。
「ちょっと。 どうするんだよ! どうやってするんだよ! オシッコ」
そんな二人の研究者目線に対し、オレは怒りあらわにして叫ぶ!
だって今、オレはオシッコが漏れそうなんだぞ!
「美樹。 ちょっとこっちに来なさい」
そんなオレの気持ちなんかまったく無視して、父さんは本当に一人の研究者の目でオレを見ているようだ。
オレは仕方なく言われるがまま、父さん達の寝室のベットに寝かされて、体の隅々まで診察された。
「智子、みてごらん。 100%成功だな」
「アナタ、これはノーベル賞ものだわね♪」
「ねぇ、いったいオレの体はどうなったの?」
「あぁ、美樹。 お前の体はもう100%女の子になっちゃたんだ。 心配しなくても、オシッコは普通の女の子と同じようにできるから安心しなさい」
「なっ!? そんな~。 ねぇ、オレ・・直ぐに男に戻れるんだろ?」
「ラットの実験では・・・」
そう言う父さんの顔は、少しもすまなそうな顔には見えず、むしろキラキラ輝いて見える。
それを見たオレは、めちゃくちゃ不安な気持ちではあったが、短くこう訊いた。
「実験では?」
ゴクッ
オレは緊張と不安のあまり、おもいっきり生唾を飲み込んだ。
「もう一度この薬を飲ませたラットは100%死んだ」
「えぇっ! それって・・・ もう一生オンナってこと・・・」
最悪だ・・・ オレはそのまま、ふぅっと意識を失った。
・・・
・・
・
「う、う~ん」
チチチチ・・・
遠くで小鳥の鳴き声がしている。
もう朝かぁ。 そういえば今日から期末試験だったっけ?
ゆっくりとベットから起き上がったオレだったけど・・・
プルン
ハッ!
「あ、アレは夢じゃなかったのか? って、あわわっ 声まで変わってるぅ~」
これが自分の声? まるで女じゃないか。
恐る恐る洗面所の鏡で自分を映してみる。
「誰?・・・ これ?」
そこには今までの自分とは違う、まるで別の女の子の姿が映っていた。
「母さん、母さん!!」
オレはバタバタとリビングに駆け下りた。
「美樹。 気が付いたの。 よかった2日も寝たままだったから心配してたのよ」
「母さん、コレ・・・」
男物のパジャマなのに、ぷっくりと盛り上がった胸を指差しながら、母さんの顔を訴えるように見つめた。
「ごめんね。 美樹」
「いいよ! 謝ってくれたって、もう元には戻れないんだろ!」
「そうね。 今・・ お父さんがいろいろ手続きをしてくれてるの。 ああ見えてもお父さん、各方面にいろいろと顔が利くお友達が沢山いるのよ。 心配しなくても、ちゃんと女の子として生きていけるようになるから」
「そんなぁ。 体は女になっても心は男のままだぞオレ」
「そうそう、お母さんね。ミキちゃんのためにイイもの買ってきたの」
「イイもの?」
「そう。 これよ。 ほらっ」
そう言って、母さんがオレに見せたものは、女ものの洋服だった。
しかも物凄い量だ。 いったい何時揃えたんだろう?
「お母さんね、実は娘も欲しかったのよ。 だってカワイイ服が着せられるでしょ」
「なっ、オレは絶対そんなもん着ないからな!」
「でも、男物の学生服じゃ学校行けないでしょ?」
「だって、スカートなんか穿けるワケないじゃん」
「あら、似合うと思うけど。 もう体は完全に女の子なんだし。 それに声だって」
「母さん、人のことだと思って! オレは男だっつーの!」
「ミキちゃん。 ちょっとこっちにいらっしゃい」
母さんはオレをドレッサーの前に座らせ髪を梳かすとピンク色のリボンで髪を結んだ。
「ほらね。 ちゃ~んと女の子になったわ」
前からオレは髪が長い方だったけど、鏡の前のオレは結構かわいい女の子になっていた。
かわいいのが、なおさらショックだった。
「ミキちゃんは、あの薬の作用で体や顔付きなんかも女の子っぽく変化してるの。 もうどっから見ても完璧な女の子よ」
オレは何かを言う元気も無く、ただそのままぼ~と鏡を見ていた。
「あぁ、これは夢だ。 早く覚めてくれよ~! こんな事実際に起きる理由(ワケ)がないじゃん!」
「あっ、そうそう。 学校も富士見ヶ丘中に転入できるように手続き中だからね。 たぶん三学期から通えるようになるわよ」
「富士見って、あの私立の?」
「ええ。 あそこの制服ってとってもカワイイのよ~」
「・・・」
「あら? どうしたの?」
「母さん。 あそこの女子の制服って、超ミニスカートだぞ!」
そう。 オレ達男子生徒の中では、富士見ヶ丘の女子の制服って人気が高いんだ。
実はオレだって、彼女作るなら富士見ヶ丘の子って、密かに決めてたんだから。
でも、その制服を自分で着なきゃならないなんて・・・トホホ
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