2019/01/27

思いの外空席があった自習室の自習席を確保したぼくは、必要な参考書、ノート、ペンケース、医薬品入れ、ヘッドホンアンプを机の上に取り出す。これがぼくの必要とする自習セットだ。そうするとぼくは席を立ち、喫煙所に向かう。なけなしの金で何かタバコに合う飲み物を買い、タバコに火をつける。おっと、ライターを自習席に掛けた上着においてきてしまった。やれやれ。呆れるほどライターを所持しているにもかかわらず、こういうことを度々やってしまうんだよな、ぼくは。仕方なく見知らぬ喫煙者に申し訳なさそうな顔をしながらライターを貸してくれないかと頼む。大抵の喫煙者は快諾してくれる。というか今まで断られたことがない。世の中は思うほど捨てたものではないと思う。ぼくは善良な喫煙者に借りたライターで自分のタバコに火をつける。時々タバコそのものを忘れてしまうが、その時は流石に取りに戻るか買いに行く。銘柄の問題もあるし、流石にタバコを1本くれないかと頼むのは敷居が高い。聞いた話によると、海外では割とよくあるらしく、海外はタバコが嘘のように高いこともあって1本あげると100円程のチップをくれるらしい。日本にいると信じられないような話だ。タバコに火をつけるとぼくはおもむろにポケットからエスタロンモカを取り出す。カフェイン剤である。勉強をする時にはこれが欠かせない。ぼくはエスタロンモカ、もといカフェイン錠を3錠取り出し、先ほど買った飲み物で飲み下す。それからぼくはようやくタバコを吸い始める。タバコを吸っている時は何も考えない。正確には何も考えないようにしている。頭を通り過ぎるのはどうやっても抑えられない強迫的な思考や感情だけになる。それはいつも結構つらいもので、タバコを吸いながらぼくは泣きそうになる。いやいや、こんなところでいきなり泣き出す異常者がいてたまるか。ぼくは慌てて心を整えようとする。いつものことだ。無心でタバコを吸うことに集中する。ぼくの吸ってる銘柄は持たせようと思えば大体4〜5分は燃え続ける。それは大体常に聴いてる何かしらの音楽の1曲余りに相当する時間である。音楽を聴きながら、ただただタバコを嗜む。1曲の音楽が終わる頃、ぼくはタバコの火を消す。大体ほとんど吸いき切っている。それからぼくは、スマートフォンを取り出し、Twitterを開く。タイムラインにはさほど重要でないツイートが並んでいる。ぼくは未読のそれらを消化しながら物思いに耽る。時々ある人のツイートが流れてくるとドキッとしたりハッとしたりする。まあそれはどうでも良いことだが。ぼくはこの時間は考え事をする。大抵は下らない、というかどうしようもないことを呆然とまさに"物思いに耽る"という表現そのもので考え込む。考えては時々ツイートに起こしてみたりする。チラシの裏の落書きのような感覚で。誰も見てない。誰も気に留めない。ツイートをする時、いつもぼくにはそんな感覚が付きまとう。それは少しだけ心地の良いような、少しだけ寂しいような気がした。また聴いていた曲が終わる頃、2本目のタバコに手を伸ばす。おっと、ライターを忘れていることを忘れていた。バカだなあ、といつも思う。大抵の喫煙者はタバコ1本を2〜3分で吸い終えたのちにそそくさと喫煙所を立ち去る。ぼくはガラッとラインナップが変わっている喫煙者の中の誰かから再びライターを借り、タバコに火をつける。いけない、そうこうしてるうちに聞いている曲が1分半ほど進んでしまった。ぼくは巻き戻してそれを聴き直す。ちょうどタバコを吸い終えるタイミングで曲が終わるように、と。いつもぼくは喫煙所でこのルーティンを3回繰り返す。タバコを3本吸う。曲が6〜7曲流れる。約30分。それが終わると、そろそろ最初に飲んだカフェインが効き始める時間になる。そろそろ自習室に戻ってやるべきことに取り掛かろう、ぼくはそう思って喫煙所を後にする。

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