After
ジェレミーは体がきかなくなるまで十五年ほど、浜の管理と漁師を続けた。そののち、ツクモガハマ新図書館の初代館長となった。就任したとき、ジェレミーは戸籍上で六十三歳だった。
開館日の式典でジェレミーは、業者が書いた当たり障りのないスピーチをして、最後に付け加えた。
「ここにいる子どもたちが生まれる前、外から落ちてきた俺が一番詳しくなれるほど、この場所は長く、誰もいない状態だった。
だが、これからは違う! どんどん読んで、その知識を役立てろ! たくさんの物語や伝記を読んで、異なった考えに触れていけ!
そうすれば、ここだけじゃなく、ジロウじゅうが、昔と同じにならないで済むはずだ。」
ブールの子である、まだ一回り小さなむぃが二体、それぞれ共通語と惑星連合語で話すのを聞き届け、ジェレミーは壇上で一礼して去っていった。
* * *
式典が済んだ後、ジェレミーはせっかくの館内には一時間もとどまらず、支度をして帰っていった。職員の何人かは理由を知っているので、引き留めたり尋ねたりしない。
自宅に鞄と上着を置いて、ジェレミーはそのまま海へ向かって歩いた。人間の町ができたことで植生が変わった場所は多いが、ここは海岸に近づくと相変わらずヤシモドキの森が広がっていて、砂浜を守るようだった。
後から作られた簡素な道を通り、砂浜へ出る。境目近くに、数本だけ、砂浜にまばらに生えるヤシモドキがあった。その中の一本に、古いシェルターの建材で出来た棒が一本立ててあった。棒には子供が書いたようなおおらかな文字で「じぇれみ ぶーる ねーる」と記されている。
ジェレミーは棒のそばに跪いて、朝から式典が終わってここへ来るまでのことを共通言語で話しかけた。この棒は、ブールとネールの墓である。むぃに墓を作る習慣はないが、約束して、用意しておいたのだ。根元には二体が溶けたときの液体が埋められている。そして、ジェレミー自身も、ここに埋葬してもらうように家族に頼んであるのだった。
太陽の位置がずいぶんと高くなった。ジェレミーは我が家へ戻り、玄関先で待っていた子供たちを抱きしめ、妻に口づけた。
表札には『ジェレミー・D・ハマグチ』と彫られている。
「ただいま」
ジェレミーは子供たちに引っ張られるように家の中へ入っていった。
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