第20話 広間にいた人々
「どうしたの、そんな真剣な顔になって」
「いや、舞夢も言うようになったなあと思っただけだよ。」
絡み合った蜘蛛の巣の糸が、一本解けた。
そのあと兄さんは、私たちに今回の収集について話し始めた。
今回の収集には、私と樹里ともう一人氷道雪夜を呼んだそうだ。
雪夜を読んだ理由を聞くと、兄は「いけばわかる」と一言言って
何回聞いてもその一点張りだった。
ひとまず兄さんの部屋を用意して、今日は終わりにした。
明日のことはまた明日考えればいいのだ。
そして、収集された日になった。
うちに来た次の日に兄さんは準備があるとかなんかで家を出て行った。
樹里はそのまま泊まっていった。
家を出て、まっすぐ進み森の中へ入る。
通称迷いの森。昼なのに夜のように暗く、引き込まれるような闇。深い緑の葉に太い幹、そんな木がたくさん集まっている。一度入ったら出られねくなると言われているこの森だが、実のところこの森はただ単に道が複雑なだけで慣れてしまうとそうでもない。
もし迷ったとしても空を飛んで家に帰ったり瞬間移動したりして脱出することができるのだから。
「樹里、今回の件そういえば兄さんくる人と場所だけ伝えて内容は
一切触れてなかったね」
「そういえばそうだったね。いけばわかるでしょ」
樹里の自信ありそうな目を見る限り、だいたいのことは見当がついているようだ。私も検討自体はついているのだが、樹里にも確認したかっただけだ。
ひたすら森の中を進んでいくとそこには大樹があった。
そこらへんにある木なんかの何十倍も太い幹に広く行き渡った枝。
緑に少し青が入った感じの特徴亭な葉の色は幼い頃大好きだった色だ。
その幹に近づいて、そっと手を触れてみる。
やはりこの木は暖かいまるで人のようだ。
「舞夢ちゃん、行こっか」
樹里に呼ばれて、振り返るともう準備は整っていたようで、
二人用の魔法陣が描かれていた。緑色に光るそれは、私も久しぶりに見る。
この魔法陣は三大名門しか知らない魔法陣だ。
これを使うことによって大樹の下にある広間に行けるのだ。
毎回変わる魔法陣はいちいち覚えるのが大変なので樹里に任せている。
樹里は教えなくても、なんとなくで魔法陣がかけてしまうのだ。
エメラルドグリーンに光る円の中に無数の文字が書かれ、
複雑な線が引かれている。それを踏まないように飛び越えて円の中心にたどり着くと体がフワッと月の上にいるように浮いた。そのまま目を閉じていると
足に何かを踏んだ感覚があり、目を開けると広間についていた。
広間の壁と床は暖かい木の板の模様で、右側に一つのモニターが設置してある。
中心には学校で普通に使っているような机と椅子が三つ。その前にもう一セット。これは兄の分だろう。配置から言うと、まるで面接を受けるような並びだった。いや、これから面接ができるような体勢だと言っても過言ではない。
その一つに雪夜は座っていた。その隣に私、そして樹里と座った。
「雪夜はどうやってここに来たの?」
そういえば雪夜は三大名門ではない。なのにここに来ているということは誰かの先導なしでは不可能だ。まあ、兄だとは思うけど一応聞いておこう。
雪夜は横目で私を見てすぐに視線を戻した。
「お前も拉致されたのか?」
ボソッとつぶやいた。
「は?拉致?私は自分の力でここに来た。その前に私が拉致されるなんてあるわけないでしょ。しかも樹里付きだし。今日は収集されたから来たのよ」
話が全然通じなくてイラっときて少し強めの言い方になった。
でも、そんなこと言うってことは兄が雪夜を拉致したってことなのかな。
すると、いきなり電気が落ちて同時に床も一気に急降下し始めた。
風が私の体を切り、もう床に足はついていない。なんとか空中でバランスを取っている状態だ。樹里も雪夜もやっと体制が整ったようだ。それを確認した私は
魔法を発動した。
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