第19話 兄

私の誕生日パーティーが開催された翌日、いきなり収集がかかった。

しかも、その収集は私が行ったものではない。

しかし、私も呼ばれているということは、きっとあの人からの収集だと思う。そう、私の兄だ。

私の家族は、あの日全員死んだ。しかし、兄だけはもう家を出て一人暮らしをしていたので生き残った。私をどこで預かるか話し合うときに、

真っ先に出た名前は兄だったが当時一人暮らしを始めたばかりだったので、場所的にも金銭的にも無理だと判断された。よって名乗り出た祖父母の家に私はいる。実際兄とはさほど仲がいいわけではないので、連絡も一切取っていない。

あと、なぜ私が今の炎道家のトップかというと兄が辞退したのが理由だ。

理由はただ一言「めんどくさいから」。普通はこれだけの理由で辞退できるはずはないのだが、ちょっとした好奇心から代わりに私がやると言ったので片付いた。

そんな兄が今頃急に私たちを収集してどうしようというのだ。

でも、行くしかない。何かが隠れていて見えそうだけど見えない。まるで黒い霧がかかったような心を落ち着かせて家を出た。


学校の近くの大通りに出ると、ちょうど樹里が来ていた。


「おはよう、樹里のところにも来た?」


最後のところだけ樹里にしか聞こえないような声で呟いた。

すると、樹里は小さくコクリと頷いた。


「舞夢ちゃんは出席するの?」


「出るよ。というか出席しないと後から兄さんに何されるかわからないもん。

あの人マイペースなくせに異様に強いんだから」


少し早口に伝えると樹里も大きく賛同した。


「だよね。小さい頃舞夢と二人掛かりで倒しにかかっても全く歯が立たなかった

のを覚えてる。でも、今やるとどうだろうね」


兄さんに挑戦したのは当時5歳だったかな。あの頃はあいつに復習してやるってはりきりすぎて津役なろうと兄さんに挑戦して一瞬で負けての繰り返しだったか。


大通りを通り過ぎると学校が見えた。

私たちはいつものように教室に入り、先生に事情を伝えて3限で早退することになった。理科、数学、魔法の授業を終え私たち二人は学校を後にした。

一番明るい昼過ぎで、耐えきれなくなり私の家まで瞬間移動をしたのだった。


「ねえ樹里、ちょっと待っててもらっていいかな。少し出てくる。」


「いやだー。ちょいちょい出てきなさーい」


どうやら樹里も気づいていたようだ。この家に誰じゃが侵入しているということを。しかし、この家は強力な結界で守られているので簡単に侵入するのはまず不可能だ。そこで可能性として考えるのは三大名門の誰か。私はここにいて、樹里も一緒にいるから除外される。もう一人はどっかにいるし、最後に残るのは、


「兄さん、何しに来たの」


「やあ、久しぶりだね。舞夢、樹里。久しぶりに帰ってきたから家でも見ておこうかと思って。それにしても二人とも成長したね。お兄ちゃん感動したよ」


「うわっキモ。誰この人。私こんな人知らない。兄さんのそっくりさんだよ。

どっかのスパイだよ」


「うんうん」


二人で兄さんをいじっていた。

でも、本当に変わってしまっているのだ。前の兄さんとはもう180どかわっている。


「ちょっひどいなあ、俺だよ俺。」


「オレオレ詐欺には引っかかりませーん」


そういうと、兄さんはいきなり真剣な顔になったので私たちもそこで黙った。

一本の糸が空気をはりつめる。蜘蛛の巣のように複雑に絡み合った糸をほどいていこうか。


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