エメラルドグリーンの墓標
ナカタサキ
プロローグ
五年前の晴れた冬の日、僕の両親が絵の具になった。
不慮の事故だったらしい。らしい、と言うのは当時の僕はまだ十歳でこの時のことを思い出そうとすると記憶が霞んでしまい上手く思い出せないのだ。
僕は両親が亡くなってひとりぼっちになってしまい、教会で泣いていたら神父様が
「高貴な魂の持ち主は美しい色の絵の具になる」と教えてくれた。
穏やかで優しかった父は全てを優しく包み込んでくれる真夜中のようなミッドナイトブルーに、明るく笑顔に溢れていた母は、春に咲く可愛らしい花のようなイエローになった。どちらも物珍しい色ではないけれど、とても美しいから僕の両親は高貴な魂を持っていたのは僕の自信になった。
高貴な魂を持つ父と母の下に生まれた僕もきっと美しい絵の具になれるはずだからひとりになってしまったけれど大丈夫だと思えた。ミッドナイトブルーとイエローが僕の傍でいつまでも見守ってくれるから、怖いものなんて何もなかったのだ。
その思いは軍人になった今でも変わらない。
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