アナタが消えた後で

アーモンド

プロローグ

『……ろ!……は中止だ!!』

意識が半分夢の中、ボクは博士の声を聞いていた。彼の声は安心出来るのだが、怒ると怖い。

この声も、どうやら部下に怒鳴っているらしかった。が、いつもとは何かが違った。

『止めろ!実験は中止だ!!』

何の実験なのか、博士は鬼気迫る顔色で部下に叫んでいた。一体何があったのだろう。

目を開けて、辺りを見てみる。

ボクはどうやらガラス張りの空間に入れられている。博士いわく『モルモット部屋』と言うらしい。

博士の様子から推察するに、ボクを実験に使用し、何らかの不具合が起きた。

あーあ、博士ってば何でやらかしてばっかりなんだろう。この間もハムスターのベスを遺伝子組み換えでトカゲに換えようとして、ミンチにしてしまったというのに。

今度はとうとう、ボクの番か……。

そう思った、瞬間の出来事だった。

バチン。

何かが強烈な閃光と共に破裂した。

そして次に視覚が蘇った時……ボクは鏡の向こうにドラゴンを見た。

更に、研究所は跡形も無くなって、世界中の建物がぐちゃぐちゃになって、人が皆ミンチになってしまった後だった。

「……ぁ……ああっ……」

喉が肩が視界が、がくがくと震えた。

嗚咽が空に響き渡る。

そして一匹の化け物が、生まれたのだった。

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