DIVER-ダイバー-

薄雪朱鷺

第1話 A Bad Day -厄日-

アメリカ合衆国

コロンビア大学

世界的に有名な超一流の私立大学。学者の憧れの学び舎。

まぁハーバード大学や、イギリスのオックスフォード大学には敵わないのだが、

僕はコロンビア大学に入学できたことをとても

僕はIT科目が好きで履修は常にIT関連を受けてきたのだが、

レベルが僕に追いついていないらしい。

入学して半年、講義には出るものの、素行、態度は悪く、

その一方成績はすべて上位。

教授方には目をつけられ、レポート課題は普通の学生の倍はだせと

嫌がらせを受ける日々。

「でもその課題は既に終わっているのだろう?」

「ああ、この中に。」

そう言って僕は友人のジェイクにメモリを提示した。

そこらで売っている17ドル程度のUSBメモリだが、

このなかには僕がジェイク、他にの課題を代行したデータが詰まっている。おそらく100ドル以上の価値があるだろう。

「あとは図書室ライブラリに行って印刷してくれば終了さ。」

「データを教授に転送してやれば済むのにな。」

年輩の人たちは紙媒体が好きだからな。

このご時世に不便なことを。そう愚痴を心のうちに留め、

ジェイクと図書室へ向かう。



「16・・・17・・・18・・・19・・・20。ピッタリ20枚印刷完了。」

「大変だな。俺たちは5枚で達成なんだぜ。お前の教授からの嫌がらせ、地味に学校内で有名になっているぞ。」

ジェイクは心配してくれてはいるが、僕は好きなジャンルの科目ならレポートを100枚書いてやっても良かったくらいだ。

「僕が好きでやっているんだ。講義は暇だけどね。」

図書室の時計は12時を指していた。

昼食後に教授にレポートを提出するか。付き添ってくれているジェイクに

そう伝え、僕らは一度大学を後にし、行きつけの屋上ラウンジレストランへ足を運んだ。



大学生ごときが高級レストランに入り浸っているのがおかしいって?

先ほど言ったように僕には出資者がいるんだ。お小遣いはいくらでもある。

アルコールを口に含めると饒舌になるのが僕の悪い癖だ。

「ジェイク、今日は僕の奢りだ。飲め。真っ昼間から飲む酒は美味いぞ。

なんて背徳的な味なんだ・・・!なんて大人的アダルティな味なんだ・・・!」

その場の雰囲気、そしてラウンジであっても屋外の席で飲むわけだから、

普段と全く味が違うように感じる。

「クリス・・・そのへんにしておけ。この後教授に会いにいくんだからよ。

ただでさえお前、教授らを見下しているのにそんな態度とっちまったら

レポート20枚じゃ済まないぞ。」

「ジェイク・・・今日初めて僕の名前を呼んでくれたね。いつ呼んでくれるかずっと待っていたよ。ほらあそこに見えるハドソン川綺麗だろ?」

とうとう話まで脈絡がなくなってしまった。頭では分かっていても、言葉が収まらない、絶えず何かを喋り続けたがっている。

「そういう風に話すのやめろ。同性愛の大学生と勘違いされちまうじゃねぇか。

ほらもう行くぞ。身体も冷えてきただろ?」

あいにく、アルコールのおかげで僕の身体は寒さを感じてない。

だけど何かを忘れているような・・・。

左腕にはめている腕時計に視線を流すと時計の針はとっくに午後を回っていた。

「教授?!教授のところへ行かなきゃ!」

「さっき言ったろ。勘定済ませてくるから酔い覚ましとけ。」

ジェイクはそう言って奥のレジへ行き、僕は席を立ったがかなり足元がふらつく。後でジェイクに肩を借りよう。そしてトイレに連れて行ってもらい、おもいっきり吐こう。

すると強風が僕を横切った。クリップで留めていたレポート用紙がそのはずみで外れ、宙を舞ってしまったのだ。

「ああ・・・!しまった・・・!」

僕はふらつきながら宙を舞うレポート用紙に手を伸ばして回収を試みたが強風は収まらず、他の客が座っているテーブルに身体をぶつけながら、相当な迷惑行為をしながらラウンジを駆け巡っていた。



やっと会計を済ませた。さっさとクリスの用件を終わらせてMLBを

観戦に向かうとするか・・・。

クリスのいる席へ戻ろうとした時、背筋が凍る景色が見えた。

「ばっ・・・バカ野郎!クリスッ!!」

クリスは転落防止の柵の向こう側へ侵入していた。

俺の声に反応して気づいた客たちも視線をクリスの方へむけ、悲鳴やざわめきが拡大していった。

宙を舞う紙を拾おうとして、そして酔っぱらっているのか気づかぬうちに

柵を越えていたのだ。

「はやくこっちへ戻ってこいクリス!紙は後でまた印刷すればいい!」

俺の声が伝わり、クリスはこっちに視線を向けた。

「ああ、ジェイク。そう・・だ・・ね。」

そういってクリスは身体のバランスを崩し、倒れかけ、


俺の視界からいなくなった



身体が冷えてきた。

風が背中をうつ感覚が気持ちよく、我に返る。

そして酔いは一瞬で覚めた。

目に映る景色は下は空、上は地上。

自分が落下している最中と気づいた。

そうか、僕は誤ってビルから落ちたのか。

落ちていくなかで自分の人生を総振替えする。

元々子供の頃から数字が好きだったわけで、IT関連の科目を頻繁に学んできた。

それがいつしか、妬みになっていって教授らに嫌がらせを受けていくようになった。

他にも色々と思い返したいが

地上はすぐそこだった。


ああ、なんて厄日なんだA Bad Day To Diehard


背中が地面に当たる感覚を受けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る