二段ベッド

 なかなか寝付けず、ベッドの中でゆったりとした音楽を聴きながら考え込んでいると、上で弟がおっぱじめた。 ギシギシとベッドはきしみ、荒い息づかいが聞こえる。 部屋がないとはいえ、性に目覚めたお猿さんと年頃の娘を一緒にするか? まともな親の神経じゃない。


 イヤホンのリモコンで音量を上げてやりすごそうとも思ったが、さすがにギシギシいいすぎなのでクレームをつけることにする。 理解あるやさしい姉でもさすがに許せない限度というのはあるのだ。 うっさいわぼけぇ、お前の行為丸聞こえなんだよ!というメッセージを込め下から渾身の力でパンチを放つ。


 いってぇ…。 皮剥けたかも…。 わたしの多大なる犠牲に対しても適切な回答は返ってこない。 むしろ音が大きくなってないか? 完全に姉を舐めていますね?


 おぞましいものを見る可能性やら、弟と修復不能な関係になるかもという予感はあったが、不本意な負傷に気がたっていた。 はしごに手をかけ一気に覗き込むと、弟に馬乗りになって首を絞めているババァと目が合った。


 三十秒かそこらか、もっと短かったかもしれない。 ババァは浮かび上がるようにスッと姿を消した。 幽霊だとかお化けだとかを見たのはこれが初めてだった。 弟はそんなことをされていても、まだ寝ていて、しかも、しあわせそうだった。

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