番外編 最期の一匹

 昨日あった悲しい出来事を。


 私の家には植物以外にも生き物はいる。正確にはいた。


 子赤の金魚である。

 実は私は水生生物を飼うのはあまり好きではない。水ものはうっかりすると臭いが発生するし、うっかりすると変な虫が沸きそうだし。うっかりしなきゃいいだけだが、なかなか手間がかかりそうで。後は死んだあとぷかーって浮いてたり、それも気づくのが遅いと腐敗してたり…つまりはあまり好きじゃない。


 それでも我が家に金魚がいた。きっかけはこれも六年前くらいにちょっとしたもので、金魚すくいではなくちゃんと買ってきたもので。まぁ…理由はちょっと可哀想なので割愛。その代わり、その後はきっちり私が面倒を見ている。


 我が家に来たのは四匹。

 しかし、一匹は水槽ではなく何故か転がっていたビーカーで育てていた。(それでも元気)でも、魚の飛ぶ習性を知らず、いや、一度は気づくのが早く、自殺未遂で済んだけど二回目は気づくのが遅くて気付いたときは干からびていた。南無。


 残り三匹は元気にすくすく。あまりにも私がずぼらだったのでしばらく砂も敷かず、まあポンプもいらんだろうと思って水槽に付属のろ過機ぐらいしか使っていなかったのにすくすく育つ。


 二年三年と経つといつの間にか大きくなって、ちゃんと砂は敷いて。ポンプは最後まで設置しなかったけど二度の引っ越しにも耐えた。しかし、六年目。今住んでいるアパートにきてまさかの二匹死亡。原因は分からない。以前のアパートでも体からカビっぽいの生えて塩水浴や薬浴して治して、今回も薬浴とイソジン浴(ちゃんと濃度を守って)したのに、続けざまに二匹死亡した。大きくなったのに同じ水槽に三匹もいて、酸欠かアンモニアか…。残った一匹は元気に悠々と泳いでいる。子赤なのに白い、薄紅色というか、イチゴミルクのような子だった。なのに…。

 昨日。ふと水槽に目をやるとその子は泳いでいなかった。


 最近の自分を振り返る。

 二匹死んだとき、この砂はもうよくないと思って砂を捨てて、もう少し落ち着いたら砂を買おうと思っていたのに買わなかった。

 以前と違ってよく見えるとこに水槽がなく、忙しいのを理由に餌を入れ忘れる時があった(かもしれない)。少し曖昧。入れすぎても食べきれなくて水が汚れるから少なすぎたのかもしれない。

 なんでもいい。現実に自分のせいで最後の一匹も死んでしまったのだ。

 水槽の底に溜まるコケか何かを金魚は食べていた。やっぱりお腹がすいて、空き過ぎて、体が弱ってしまったのだ。病徴はなかったけど、きっと栄養失調だ。なんてことをしたんだろう。


 私は水生生物を飼うのは嫌いだ。でも、この金魚たちには愛着があった。

 いつも餌をあげる方向が一緒だから近づくとそっちにパクパク口を開けて近づいてくる。どんな状況でも逞しく泳いで、ずぼらな飼い方してきたのに買ってきた時より倍になって。楽しみを与えてくれたのに。


 水槽のろ過機の部品がうまくかみ合っていないのか、少しうるさいくらいだったのに今は聞こえないのがとても寂しい。今はただただ悲しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る