人間レビューサイトの受肉物語
ちびまるフォイ
その人間の評価は★いくつ?
「人間はいったいなにで価値を決めたらいいのだろうか。
学歴か、財力か、人脈か……難しいぞ」
「性格ですよ。人となりがその人の価値を決めるんです」
「それだ!!」
とある研究所のふたりによって開発された人間レビュー装置により世界は変わった。
人間は誰もかれもが生まれた瞬間から死ぬまでレビューサイトに掲載される。
「俺こないだ評価が★3から★4になったよ。
電車でお年寄りに席をゆずったのがよかったんだなぁ」
「あ、いま下がった」
「え!? なんで!? なにも悪いことしてないよ!?」
「『自分の功績を人に自慢しました』ってある」
「めざとい……」
人間レビューはどんな悪事もどんな善事も見逃さない。
小さなことから大きなものまでちゃんと計算する。
「総理、あなたの人間レビューが最近落ちていますね。
なにか後ろ暗い事でもあるのではないですか?」
「な、なにを……」
「人間的に評価されない人間を、国のトップにするのはおかしいです!」
政治家も人間レビューの高さによって決まる。
人間的にちゃんとした人だけが良い職業につく。
Q,人間レビューによってどうなりましたか?
「いやぁ仕事が楽になったね。前までは面接に時間をとられたうえ。
いざ雇ってみるとクズだったりしたのが、ぐっと楽になったよ」
「人間レビューの低いお客様の入場を規制してから、
お店の売り上げも良くなって、お客さんからの評価も高いんです」
「人間レビューが★3以下の人とは付き合わない!
やっぱり彼氏にするなら、身長よりも収入よりも学歴よりも、人間レビュー!」
誰しもが人間レビューで判断するようになった。
おもしろくないのは人間レビューで低評価をつけられた人間だった。
「くそ……なにが人間レビューだ。所詮は機械じゃないか。
ちょちょっと操作してレビューを回復させてやる。
そうすればみんな手のひら返して俺を評価するはずだ」
不穏なことをくわだてているのは元首相。
前の人間レビューで結果的にクビにされたことを根に持っていた。
凄腕のハッカーを雇って人間レビューへのハッキングを行った。
「って、★1になってるじゃないか!?」
「『人間レビューへの不正アクセスを確認』……なんてセキュリティだ」
ハッカーが攻撃を仕掛ける前にその動作を検知して評価した。
これでは数値を操作することはできない。
この1件から人間レビューはますます信頼が厚くなった。
「人間レビューは、不正やサクラができない完璧なものだ!」
「私、人間レビュー教に入信します!」
「いっそ人間レビューに体を与えれば神になるんじゃないか!!」
人間レビューをこよなく崇拝する人間レビュー教は大人気となり
その教祖として人間レビューを人間として産み出すことに成功した。
「ああ、なんて尊いお姿……! これが人間レビュー様!」
「この世界のすべてを見渡す神に等しい存在です……!」
人間として生まれた人間レビューは、はじめて自己評価を行った。
人間レビュー:★☆☆☆☆
・自分に都合のいい人間だけに高評価をつけている
・都合の悪い人間には低評価をつけて排除している
・人間の世界を乗っ取ろうと計画している
人間レビューサイトの受肉物語 ちびまるフォイ @firestorage
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