ごろっと掌編

馬田ふらい

ドタバタ編

魔の風

 突然、外でサイレンがうなった。

「直ちに避難してください。南東から前代未聞の巨大竜巻が接近しています。繰り返します。直ちに避難を!」

 念のため気象庁のHPを確認した。どうやらで発生した辻風はその経路上の国々を更地に変え、威力をそのままにこちらに接近してきているらしい。

「こりゃ大変だ」

 急いで車に乗り込み国道を目指すがすでに大渋滞だったので、もしやと思い、前の車を覗くとやはりもぬけの殻だった。自分も車を捨てて走った。

 だんだんと風が強くなってきた。振り返ると地中深くを掘り起こしながら巨大竜巻がいかめしくこちらに向かっていた。その巨体には地下鉄車両や喚く声、散り散りになった有相無相が舞っていた。

 もうだめだ!

 時すでに遅し。暴風に飲み込まれ、四肢がバラバラになっていた。首が千切れる間際に空が大きく割れて隙間から強い光が漏れてくるのを見た…


「ヘッ、クシュンッ!」

 おれは大きなくしゃみをした。風邪かな?

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