砂を噛む海を編む時計に逆らう

とうぺまぺと

第1話序 砂を噛む

虹に乗って高い空の味を知る。これが自由の模範解答なのだとしたらページを白く、黒い点を聴覚に効くような線を引いて、時の流れ夢の伸び方、および呼び方。

光の操り方、忘れ方、船の繰り方。

幻視の世界において必要とされてないものこそ必要だ、というようなある種の美学が私のなかで構築されつつある。

確かに狂気に踏み入れつつある。わかる。この精神世界においてすらも私の庭園は狂気がかった配色。愛してよくいるはずなのにいないものたち。誰にも教えたくない秘密を解き明かしたくない。それはまるで船から落ちて深海で孤独に砂を噛む。

孤独だけが友として使えるもの共にして、時計よ忘れて、時刻自暴自棄に溶けた解き明かし。


細胞の一つ一つ時計に触れるたび俺は俺自身と出会う。

真実と出会うとお前は真っ先に吸い込まれるような死の恐怖に襲われる。俺はもう俺自身でいたくない。俺を許せるのは俺だけで、俺を殺せるのは俺だけで、俺を忘れさせてくれるのはなんなのか?

愛を思い出して欲しい。あの時のもう一度君と再会までの、終わらない芝居を終わらせなければならない。いつもいつもお前を思い出してはいられない。次の愛はきっと俺の千切れた精神を解放するだろう白い虹で君を思い出すだけに出会う。灰色虹の時、幾多のマダラが私のこまけだらを新しくする。細胞の相棒。同胞だから間から愛を知らない時を分かち合うから。だから俺はお前を精神だけでなく肉体とももう一度邂逅せねばならない。そして卑猥と官能のつるに、必ずとも触れよう。それがもう一度出会う。

時は必要となるのだ。その瞬間こそ。同じ時間を共にもう一度仄かな灯りと信じて、もう一度だ、もう一度。そう俺は固執している。死という猥雑に。混迷と時計塔。ほっとくと忘れる痛みなら、もう俺は苦虫を自ら噛んで食いつぶす痛みを思い出せないだろう。本当にその時時計塔が鳴らすチャイムが、独りよがりの愛撫なら。

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