武器が【空白】の冒険者でも冒険は出来ますか?
@ryurion
第1話トップクラスの生徒
「表彰。サキ・ヴォリミヤ殿。あなたは本校において学力面、生活面どちらも大変優秀な成績を収めたことをここに称する。校長ガーマルド・アーマルド。……おめでとう」
((パチパチパチパチ))
1人の青年。サキ・ヴォリミヤは、生徒達からの盛大な拍手を受けながら、表彰状を受け取った。
(あーだりぃ。何が成績優秀だ、当たり前だろ、だってあの人に追いつきたいんだもん)
心の中でそんな事を思うサキは知らなかった、自分に冒険者になる資格がないことを――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おーいサキー! どうだったお前のステータスー!」
「…………」
「ん? どうした?」
この世界は16歳になると冒険者になれる。
もちろんサキが卒業した高校は冒険者学校。冒険者になるための勉強を死ぬほどさせられる。
モンスターの生息地、弱点。冒険者自体の心得、その他もろもろ。サキは憧れの冒険者と同じ土俵に立つため死ぬほど勉強した。……したのに。
「……ん? あぁ、個人情報は漏らさない。これ冒険者の基本だろ?」
「ちー! そんくらい教えてくれたっていいじゃねーかよー」
学生時代の親友である、茶髪の髪を適当に短く切った様な髪型のポンドは、ぶーと口を尖らせる。
サキは自分の名刺サイズのステータスカードを制服の内ポケットにしまい、ポンドに笑いかける。
――かなり苦しい笑顔で。
その表情を見て何となく察したポンドはサキに、まー確かにそうだな! と一言残すと、飲み物買ってくる! と言ってこのギルドの巨大な扉を開け、出ていった。
「飲み物……か」
サキは知っていた、ポンドがいつも愛用しているリュックサックに飲み物が入っていたことを。
気を使わせてしまったな。
そう思ったサキは後で礼の一言でも言おうと決め、近くにあった木の椅子に座る。
周りでは同級生達がステータス登録を終え、ワイワイ盛り上がっていた。
「俺も……そのはずだったんだけどなー。まさか、こんな事……教科書にも載ってなかったぞ」
毎日10冊ずつ教科書を読み解いてきたサキは、正直ほとんどの事は頭に入っていると思っていた。……だがそれも己の内ポケットに入っているステータスカードが全てを覆していた。
「武器……【# __くうはく__#】。聞いたことないぞ」
苦い顔を浮かべ拳を握るサキはただ一つだけ思った。
――この世界は生まれつき理不尽で残酷だと。
正しかった。
大人は綺麗事を並べるように《努力》を押し付けてくる。何事も努力すれば何とかなると。
それはどうだろうか? 才能は努力で超えられない。
ましてやこんな世界――生まれつき自分の武器が決まる世界なんて、才能の塊じゃないか。
憧れの冒険者――クラミリア・サキフェストだって太刀という立派な武器があると言うのに! そんな武器もない俺が同じ土俵に立てるはずがない。
未だ周りの熱は止まらない。
「俺短剣だったー。最悪だよー!」
何が最悪だ。俺は武器が無いんだぞ。
「私斧だったんだけどー! もっと可愛いらしいやつがよかったー!」
何が可愛いやつだ。お前自体可愛くねーだろ!
「おーいサキー」
「うるさい! うるさい! みんな贅沢言うなよ! 俺の気持ちも知らないで! ……ってすまん」
「あ……あぁ俺は大丈夫だせ! それより……やっぱりなんかあったのか? 言いたくないならあれだけど、話聞くぞ?」
とうとう限界に達したサキは、大声で叫び散らしてしまった。しかも飲み物を買い終わったポンドに。
ざわざわしていた生徒達の声はしんと収まり、飲み物を持ったポンドに心配そうな顔で見つめられる。
何がトップクラスの成績だ。実際勉強も意味なかった。何もかも意味なかったんだ!
気づいたら、ギルドの外へ出て走っていた。
ポンドがおい! と手を伸ばしてくれたがそれをも無視して――
最低だ。友達も大切に出来ないなんて。
サキは無駄に空が綺麗な街の中を泣きながら走り抜けた――
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