あおはる。

さり子

1日目

今日も僕は、1人で図書室にこもって読書をしている。の彼女も、資料を探しているのだろうか、本棚を眺めている。


僕は、有村碧生ありむらあおき。コミュ症で、彼女どころか女友達も出来ない、クソ○貞です。

本棚に向かう彼女は、小柳幸春こやなぎゆきは。申し分無い顔、そして愛嬌、学力を持つ所謂である。意思表示も上手で、周りからの信頼が厚いのは言うまでもない。

全てを兼ね備えた彼女は、男女共に好評があり、1日毎に告白を受けるような人間だ。


僕とは正反対の世界に生きる彼女に、密かに僕も、恋心に近い憧れを抱いている。


すると彼女がゆっくり振り向き、その長いサラサラの髪の毛を耳に掛け、僕に微笑みかけた。無意識に見詰めていたらしい。慌てて目を逸らすも、花も綻ぶその笑顔を拝めたのでまあ良しとしよう。


しかしそんな彼女だが、友人から聞いた事だが彼氏が居たことは無いという。彼女自身がそういうのにうとい訳では無さそうだが、どうやら告白してきた男女をこっぴどく弾いてるらしい。その理由は不明だ。


「おーい有村!!」


不意に投げ掛けられた声に僕は大きく肩を揺らす。声の主は知っている。唯一無二の友人、紫村しむらだ。


「ちょ、此処図書室だよ……!」

「まあまあ気にすんなって!男の癖n……っへぁ?!」


僕の肩を痛い程にガシッと掴み揺さぶる彼の紫村のテンションに付いていけずされるがままだったが、突然彼が素っ頓狂すっとんきょうな声を上げた。言わずもがな、原因は小柳さんだ。騒ぎを聞いていたらしい、こっちに目を向けながら困った顔をしていた。


「しゅしゅみません!!!俺読書します!!」


彼女の方を向きながら噛みまくりの口調でそう告げた彼は、僕が読み終わったテーブルの上の小説を取り、開いて読書を始めた。あの彼女はと言うと……クスクスと紫村を見て笑いながら本を数冊抜き取り、図書室を後にしていた。何かと思い紫村の方に向き直ると、僕は理解し耳打ちで指摘してあげた。


「……紫村、本、反対」

「あ、ああ。そうだな!俺はこれで十分だ!」


訳の分からないことを言いながら、紫村はその休み時間の間ずっと逆さまのまま本を読んでいた。



今日の出来事といえばその位だった。

他にあったと言えば、小柳さんの借りて言った本を次に貸出するための予約をしている男子を見た事と、夜寝る前に紫村の小柳さんについての話の聞き相手になってあげたことくらいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あおはる。 さり子 @SARIKO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ