土用の丑の日


土用どよううしの日


この日には、

うなぎを食べる事で有名だが。


実は、

『う』

の付く物なら何でもいいらしい。


と、いう訳で。


うなぎ以外の『う』の付く物を、

食べる事にしたいと思います。」


その心は?


うなぎは苦手です。


私の言葉に、

仲間達が楽しそうに笑った。


「だと思ったぜ。」


「面白いからいいじゃん!」


私は今日仲間達に、


『うの付く食べ物を持ち寄って、

みんなで食べましょう。』


と、声を掛けていたのである。


「俺はこれだ!」


と、つるぎさんが出したのは、

カレーうどんだ。


・・『か』のような気もするが、

うどんだからいいか。


「あ、うどんもったか!」


「夏のカレーうどん美味いよな!」


「俺は冬かなー。」


美味しそうなうどんの横に、

今度は見た目が羊羹ようかんような、

キレイな模様もよう入りの食べ物が置かれる。


「ういろうだ。」


抹茶まっちゃと桜味もある。


緑と桜色のういろうを置きながら、

せきさんが言った。


「こんなキレイなういろう、

初めて見ました!」


「美味そう!」


「食後が楽しみだな!」


美味しそうで見た目もキレイなういろうに、

私達のテンションは一気に上がっていく。


「次は何ですか?」


ワクワクしながら私が声を掛けると、

ういろうのとなりにゴトン、と音を立て、

ごつごつした植物の根のような物が置かれた。


全員で凝視ぎょうししていると、

こおりさんが当然の出来事をげる様に、

さらっとの名前を言う。


「ウコン。」


・・・・。


こおりさん・・。」


「思い浮かんだのはコレだけだ。」


食べ物には違いないだろう?


「ウコンは生で食えないだろ・・。」


そらさんが溜息を吐いていると、

ウコンのとなりにそっとひかえめに、

文字の書かれた小さな紙袋が置かれる。


「・・えーっと。」


温経湯(おんけいゆ)?


温経湯(うんけいとう)だよ~。


私は紙袋に書かれた文字を読んでみたが、

間違っていたらしく、

おだやかな声でくもさんに訂正ていせいされた。


紙袋を出したのは、

申し訳無さそうな表情をした

いかずちさんである。


「・・すまない。」


これしか浮かばなかった。


お前もか!


「一応、

飲みやすく処方しょほうしたのだが・・。」


「そういう問題じゃねぇよ!」


つるぎさんといかずちさんのり取りを聞きながら、

私はくもさんに温経湯うんけいとうについて聞いてみた。


どうやら、

血のめぐりを良くする漢方薬かんぽうやくらしい。


「食べ物が浮かばなかったから、

薬を処方しょほうしてきたんだねぇ。」


いかずちさん・・。


先行きが、

若干じゃっかん不安になってきたところでそらさんが、

持ってきていたふた付きの大皿を

テーブルに置く。


「俺はこれ!」


そう言って、

彼はふたを取って全員に中身を見せた。


・・その上に乗っていたのは


「ケーキ?」


「うが付いてねぇだろ!」


つるぎさんにそう突っ込まれたが、

彼は


「ちゃんと付いてるぞ!」


自慢じまんげにケーキの表面を指差す。


・・確かにケーキの表面には、

チョコレートで無数に

平仮名ひらがなの『う』が書かれていた。


「な!」


大喜利おおぎりみたいになってませんか?」


私が側にいたせきさんに聞いていると、

ケーキの横に、

今度は『う』と表面に書かれた

大量の生チョコが置かれる。


「・・。」


「う、だ。」


うれしそうに胸を張るおもさんに、

つるぎさんは突っ込む気力を失くしたらしい。


「・・で、くもは何持って来た?」


額を抑えながらつるぎさんがくと、

くもさんはニコニコしながら、

手に持っていた物をテーブルに静かに置いた。


「これだよ~。」


「え?これ。」


ウコン。


2つもいらねぇよ!!


つるぎさんの叫び声が、

家中に響いた瞬間である。




その後。


うの付く?食べ物をみんなで食べ、

今年のうしの日は過ぎていったのです。


ウコンは2つともつるぎさんが持ち帰り、


後日、

本格的なキーマカレーとして、

昼食に全員で食べました。



ちなみに私が持って来たのは、

梅干し入りおにぎりである。


・・普通で申し訳ない。

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