私とサイコロ


私は、

サイコロを使うゲームが嫌いだ。


なぜか昔から、

物凄ものすごく出目が悪いのである。


マイナスや、

んではいけないマスには必ず止まり、

『ふりだしに戻る』の常連だ。


進む時は1か2しか出ず、

たまに6が出れば、

悪いマスにぴったりと止まらせてくれる。


そんな事ばかりが続くので、

実は負けず嫌いの私は、

ゲ-ム中は苛々いらいらおさまらなくなってしまう。


なので、

私はそのたぐい一切いっさいしない様に

しているのだ。


だから。


「それでも

ボードゲームをするせきさんが、

すごいと思います。」


「それはめているのか?」


心からの素直な称賛しょうさんです。


今現在、

そらさんがひまなヒトをさそい、

テレビですごろくの様なゲームを

しているのだが。


参加しているせきさんが、

私と同じ様な理由で最下位になっていた。


彼もまた、

サイコロの出目が悪いヒトなのである。


それにもかかわらず、

せきさんはこういうゲームにさそわれても、

嫌な顔一つせずに付き合うのだ。


「私なら、絶対断りますけど。」


彼のとなりで話しかけながら、

サイコロを振るのを見守る。


あ、また1が出た。


せきさんはこちらを見る事無く、

画面のキャラクターを操作しながら

話し出す。


「嫌ならば、

無理に付き合う必要は無いが」


負けるのが嫌だという理由なら、

間違まちがっていると思うぞ。


・・今度は、2が出た。


「確かに、

サイコロの目には恵まれないが、

勝負をする前からあきらめる理由にはならん。


今は勝てなくても、10、20、と続ければ、

1回は勝てる時が来る。


俺は勝てるかもしれない可能性を捨て、

逃げる方が嫌なんだ。」


3が、でた。


もうすぐゲーム終了だ。


「ああー!!」


別のヒトがハプニングが起こるマスをみ、

プレイヤー達が一斉いっせいに悲鳴を上げる。


全てのポイントに関係なく

プレイヤー順にサイコロを振り、

3~6は失敗で0点になるミニゲームが

始まった。


挑戦者ちょうせんしゃが次々と脱落する中、

せきさんの順番になる。


全員が固唾かたずを飲んで見守る中、

キャラクターがサイコロを振った。


「・・。」


「・・。」


出た目は・・・・1、である。


「おおー!!」


「スゲェ!!」


プレイヤーの中で彼だけが成功し、

そのまま時間切れになった。


他プレイヤーは当然ながら0点で、

せきさんだけが2ポイント残っている。


なので。


「おお!せきの勝ちだ!」


「おめでとー!!」


一緒に遊んでいたメンバーや、

見守っていた仲間達からも、

盛大せいだい拍手はくしゅが送られた。


彼は少し照れながらも、

私の方を見て嬉しそうに言う。


「な?」


あきらめなければ、何とかなる。


(みんなは、気付いてたのか・・。)


やっぱり、仲間達には叶わない。


を知りつつも、

それでもそっとしておいてくれた優しさと、

黙っていた意地が無駄になった事を知り・・

私は、苦笑するしかなかった。


「そうですね。」


・・久しぶりに、やってみようかな。


「私も混ぜて下さい。」


何度でも、いどみ続けよう。


あきらめずに。




意気込いきごんで参加した私が、

せきさんと熾烈しれつな最下位あらそいをり広げ


「これはこれで、見応みごたえあるな。」


「ある意味で、手に汗にぎる試合だ。」


と、全員の注目を集めた。


その結果、

この手のゲームをする時は


『何が起こるかわからないのが面白い。』


という理由で、私と彼は

強制きょうせい的に参加させられるようになる。

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