呼びかけ


「・・・・!」


ん?

今、そらさんが呼んだような。


「・・。」


誰かが呼ぶ時、

私は1回で返事をしない。


『誰かに名前を呼ばれても、

1回で返事をしてはいけない。』


幼い時から、

そう教えられているからだ。


人で無いは、

時々知り合いの声を真似まね

呼びかけてくる時がある。


もし、それにこたえてしまえば、

行かれてしまうのだ。


呼んだのが人間か、

違うかの見分け方は、

簡単かんたんである。


人で無いは、

続けて名を呼ぶ事ができない。


つまり、

名前を呼ばれたら

もう一度呼ばれるまで待つ。


その後、

再び呼ばれる事が無ければ、

相手は人ではなかったという事だ。


もう一つの方法としては、

聞こえた声の持ち主本人に、

呼んだか確認かくにんするのもいい。


我が家では、

いつもそうしている。


なので


私は自室から1階に下り、

先程聞こえた声の主、

そらさん本人に声を掛けた。


そらさ~ん。」


「どした?」


「呼びました?」


そうくと、

彼は不思議そうな顔をする。


「いや。

呼んでねぇけど。」


「あ、やっぱり。」


返事をしなくて正解だったようだ。


1人で納得なっとくしていると、

そらさんが楽しそうに笑う。


「あぁ!

ついさっき逃げた奴がいたな!

弱そうだから放っといたんだよ。

・・そっかぁ。」


あいつ、俺の声真似したんだ。


一層いっそう笑顔になった空さんは、

素早すばやく外へ走って行った。


私はそれを見て溜息をつく。


「馬鹿だなぁ。」


仲間達の声を真似まねても、

私は引っかからないのだが。


それよりも、

自分の事を知っておけばよかったのに。



逃げたモノとは、

もう2度と会う事は無いだろう。



私は静かに、自室へと戻った。

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