第十五章
レストランで、いっぱいご馳走になった四人は、ウェイターに、感謝して、料理を作ってくれた、ウェイターのお父さんたちにも、感謝して、最後には、四人とも泣いてしまった。
「何泣いているんだい?」と、聞くと、「お兄さんに会えなくなる。夕日も見れなくなったし。寂しいよ」と、弟が、言うと、「ごめんなさい」と、少年が言うと、泣き出した。
「君のせいでは、ないんだよ。僕は時期が来たのさ。ただ、それだけなんだよ」と、少年の頭を撫でながら言った。
「今夜は、ここで泊まるかい?親父がぐれちゃって、大変さ。目が覚めても、この海は暗いけど、それでも良ければ、泊まって行くといいよ。」
続けて、
「親父も、君たちに会えば、少しは、落ち着くかもしれない。この海は、なくなることがないから、それは、安心してね。」と言うと、四人は悩んだけど、夕日もなくなった海は、次の日には、もうないから、夜だけだから、大丈夫だろう。と、話がまとまると、ウェイターを呼び、「今夜、泊めてもらえますか?」と、聞くと、ウェイターは、とても嬉しそうに、笑みを浮かべながら、「ああ、いいとも!」と、返事を返し、ウェイターは、厨房へ戻って行ったが、その顔は、慶ではなく、涙でにじんでいた。
ウェイターは、幼少の時に、この海に出会った。海には、夕日が、あり、ウェイターは、海で遊んでいる間に、波にさらわれて、沖へと流されたところを、父母となる両親に助けられた。
両親は、海から、浜辺へ彼を戻すと、布を持ってきて、包むと、家まで、連れて帰った。
それから、ウェイターは、彼らの子供となった。
父は、いづれ別れなければならないことは、わかっていた。しかし、長い年月の間に、情が深くなり過ぎて、息子を手放すことが、できなかった。悲しみは、怒りとなり、自分を海に沈めた、親を憎しみ、怨み、沈められた海を再現するほど、強い意思が、働き、あの日、水の中へと押しつぶされた海を許せず、夕焼けしか、光があることを、許せなかった。
海の浜辺を、テケテケ歩いていた彼を気にしながら、仕事をしていた母は、彼が海の中に入って行ったのを、びっくりして、夫を呼んで、助けた。
以来、彼は、夫婦の自慢の息子となった。
父は、レストランを、残すか、迷っていた。すっかり看板息子になっていた彼が、いなくなるのが、残念で、いっそレストランを、やめてしまおう、と、考えていた。
子供たちが、帰ったら、息子は、いなくなってしまう。そう気づいていた。
息子も、また、明日になれば、未来に行くための使者が、彼を迎えに来るだろう。と、覚悟をしていた。
四人は、レストランの近くにある彼の家に連れて行ってもらった。
家は、普通だった。お父さんに、初めて会った四人は、びっくりした。
お兄さんと、同じくらいの歳に見えた。
「驚いたかい?私は、歳も止めてしまったんだよ」と、いい、「さあ、部屋まで案内するよ。」と、言うと、子供たちは、二つの部屋に案内された。
「すまんな、四人入れる部屋がないんだ。これで我慢してくれ」と、謝ると、「大丈夫です。僕たちは、これで、いいです」と、四人は、言うと、満足気に、弟は、ベッドに飛び乗った。妹も、もう一つのベッドに飛び乗った。
「気にいったみたいだね。安心したよ」と言うと、お父さんたちは、自分たちの部屋へと、戻って行った。
そして、部屋に戻ると、「夕日を元に戻そう。あの子たちは、とても夕日が、好きなのがわかったし。明日は、無理だが、あさってには、戻せるよ」と、父は嬉しそうに言った。
母は、「本当に、わがままな人ね。呆れちゃうわ」と、言うと、笑顔でおやすみなさいね」と言うと、布団の中に入り、眠りについた。
そして、しばらくすると、夢を見出した。その夢は、晴れ渡った青空に、太陽があって、浜辺でいろんな人が遊んでいた。夫と、息子の姿は、なかった。
母は、びっくりして、パッと目が覚めた。横を見ると、夫は、スヤスヤと眠っていた。
ちょっと奇妙な感じがした。あれだけ、息子と離れるのをこばんでいたのに、今は、心地よさそうに、寝ている。
「諦めが、ついたのかしら?」と、思うと、また、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます