第一章
第2話
彼が村に現れたのは、寒い冬が終わり、段々と暖かくなっていく春がやってきたところだった。
彼は異質だった。
彼は世界の異物だった。
何故なら、彼には ”色” があったから。
この世界には、”色” はない。
ずっと前からそうだった。
人類が生まれ、文明を築き上げる、 ずっと前から。
世界には、”色” がなかった。
そんな世界に反発する様に、彼は ”色” を持っていた。
村の近くで彼を見つけた少女は、走って彼のところにかけつけ、質問をした。
「ねぇねぇ、あなたは、なんでそんなにきれいなの?」
この世界には、”色” がない。
みんな、一緒。
みんな、同じ。
つまらない。
何か面白いものはないか。
退屈していた少女にとっては、突然現れた彼は、とても美しかった。
「なんでって?…あぁ、そうか。この世界には ”色” がなかったからな」
”色” ?”色” とはなんだろうか。
少女は疑問に思った。
”色”という概念は、まだなかった。
「い…ろ? ”いろ” って、なぁに?」
「 ”色”っていうのはね…うーん、なんて言えば良いかな…
そうだね、僕みたいに、”生き生きとしているもの” かな?」
「??」
幼い少女には、彼の下手な説明は、わからなかった様だ。
ぽけーっとしている少女を見て、彼は、
「うーん…まぁ、僕みたいな人、かなぁ」
といった。
「あなたみたいに、きれいな人?」
まだうまく伝わっていない様子の少女を見て、
「うーん、それで良いや」
彼は説明を投げ捨てた。
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