ゆきやまないと

@nutaunagi1205

第1話

 ギンギツネはいつもの様にキタキツネと一緒に一つの布団に潜りこんだ。一匹で寝るより身体を寄せ合った方が断然暖かい。雪山に暮らす動物達の知恵である。


しかしそれはそれとして、愛しい者の温もりを感じながら眠るのは安心で幸せなことだ。


「おふとんつめたい…」

「もう、この子は…」

温もりを求めてギンギツネに纏わりつくキタキツネ。ギンギツネは不満そうな声を出してみせるが、その表情は柔らかだ。


「んふー」

「もう、くすぐったいわよ」

ギンギツネの胸元に仔猫のようにグリグリと頭をすりつけるキタキツネ。キタキツネより幾分豊かなそこは暖かで柔らかいキタキツネのお気に入りだ。


「ギンギツネ、いい匂い…」

「そう?一緒のお風呂だし一緒だと思うけど?」

「ううん、違う。あったかくて安心する匂い… んっ、うふふ、ギンギツネくすぐったぁい」

ギンギツネが胸元のキタキツネの耳や髪の毛の匂いをふんふんと嗅いでみるとキタキツネは楽しそうにクスクスと笑う。


「あら、ごめんね。ここがくすぐったいの?ここかしら?」

「もー!ギンギツネやだぁ!」

おどけてキタキツネの耳や首元をくすぐるギンギツネ。

キタキツネの毛皮は、仄かに蜂蜜のような甘い匂いがした。


「ねぇねぇ、今日はね、『ジャガーマン』でハイスコアが出たんだよ!」

「あら、やったじゃない。久しぶりね。偶にはそのやる気を他にも分けてほしいところだけど」

胸元から顔を上げ、目を輝かせながら本日の戦果を話すキタキツネ。ギンギツネはキタキツネの蜂蜜色の髪を優しく梳きながら返事をする。自分より幾分細く柔らかなそれが彼女は好きだった。


「負けられない闘いがここにはあるんだよ」

「またそんなこと言って。mirai3さんだっけ?ここのゲーム全部の記録保持者。よほどの暇人…」

「…スー…スー」

ギンギツネが過去の闘技者(グラディエーター)に思いを馳せている間にキタキツネは眠りの世界に旅立っていた。それに気がついたギンギツネは目元を緩めてそのあどけない寝顔を眺めていたが、間も無くキタキツネにそっと身を寄せ眼を閉じた。

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