リッチガールとビンボーイ
@gen-miake
第1話
「そこの貴方。私と付き合いなさい」
ある少女からの突然の告白に
その場に居合わせた人間、全員が絶句した。
ここは、私立蓮城学院高等部。
幼稚舎から大学院までを有する、国内最高級の名門私学である。
エントランスと床は天然石、机と椅子は伝統ある学び舎に相応しい上品なアンティーク。
庶民には現物が想像できない、30文字前後の品がメニューに並ぶ三ツ星レストランを思わせる食堂。
視力2.0を以ってして、果てが霞む程、広大な敷地。
制服に至っては、完璧に自分のサイズに合わせたブランド仕立ての一点もの。
紛れもない本物の令嬢、令息が自家の継承に向け、自己研鑽する場である。
ある日の昼休み。
生徒達はそれぞれ食事をしたり、午後の授業に備えたり、談笑したり、と各々のひと時を過ごしていた。
そこに“コツコツコツ…"と小気味良い靴音を鳴らし、廊下から1人の少女が教室に入ってきた。
少女は入り口で立ち止まると、自らの行き先を見つけ、またリズム良く靴音を鳴らす。
その姿を見て教室の端から聞こえるヒソヒソ声。
“九法院様だ"
“明乃お姉様よ"
微かにざわめく教室を、机の間を縫って目的地へと辿り着いた少女は口を開く。
「そこの貴方。私と付き合いなさい」
美しい黒髪を靡かせ、“九法院明乃"が、その想いを解き放った。
「「「ー??!」」」
そして、教室中が絶句した。
それから二秒ほどの沈黙を破り
教室中が、いや、校内全体が騒めき出す。
教室中の視線はその相手に集中する。
「へっ?」
寝癖で跳ねた頭頂部のアホ毛を揺らし
目をこすりながら、件のシンデレラボーイは明乃を見上げた。
容姿端麗、才色兼備
実家はハイパー半端ねえ
天文学的資産を有する
九法院家の一人娘。
そんな学園のマドンナが
白昼堂々、その想いを告げたのだ。
「えっ?なんでボクなの?…ですか?」
シンデレラボーイこと"風祭 優太"は
あまりにも突然過ぎる出来事に
疑問を投げかけることしか出来なかった。
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