あとがき(ネタばれを含みます)

 今更ではありますが、朝霧芽衣というキャラクターの初出は、ハジマリの場、オワリの所という作品になります。

 ただどういうわけか、私の中で彼女と、そして鷺城鷺花に関しては、随分と重要な立ち位置であり、いつか彼女たちの一生を書いてみよう、そう思っていた。

 思っていたというよりも、書き始めた当初から、一連の流れそのものはずっと頭の中にあって、完結までに時間がかかったなあ……と、思いきや、見ると2017年5月が第一話の投稿日になっており、そうでもないのかなあと。たぶんそれだけ、私の中の構想が崩れなかったからこそ、書くペースが遅かったと感じたのかもしれません。

 軽い時系列のメモとして、以下のように。


 2045年、7月16日、ジニーに拾われる。四歳。

 2046年、格闘訓練。

 2047年、小屋作り。

 2048年、銃、魔術。

 2049年、十一月。鷺城鷺花。八歳。

 2051年、二月で終わり。十歳。

 2052年、十一歳。十二月、ジニー死去。

 2053年、一月。サンディエゴの訓練校。

 2054年、忠犬。

 2058年、六月二十三日。野雨へ。


 見ての通り、幼少期編を中心にしたメモが大部分なのは、初出である作品の方との時系列をそれなりに合わせようとした結果でもありますが、たぶん、私が書きたかった頃の話だった、というのもあるとは思います。

 私の場合、キャラクター性というものをあまり細かく指定していないのが原因なのか、書いている最中にキャラが勝手に動いている、という感じになっており、特に朝霧芽衣に関しては、もうお前は好きにしろと、そういう捉え方が強く。

 こうして書き終えて振り返れば。

 決して平凡とは言えない人生だったにせよ、朝霧芽衣はずっと一人だったんだなと。

 独りではなかったけれど、一人だった。

 彼女の性格もあるんでしょうが、心を許せる友人はいた。それは要である鷺城鷺花であったし、吹雪悦でもあった。同僚もいたし、部下もいた。最後にはちゃんと弟子までいた――が。


 仲間はいなかった、そう思う。


 いや、いないのが悪いとか、いれば良いとかではなく――背中をちゃんと預けて、同じ方を向いて、一緒に足を進める仲間がいないからこそ一人だったのか、一人を選んだからそうなったのか、よくわからないなあと。

 そういう意味で、鷺城鷺花との関係性は、複雑だ。

 信頼していて、信用しているけれど、一線を引いていて、近すぎるのに遠いような、ものすごく曖昧な相手。同じように進んでいても、見ているものが違ったり、見ているものが同じ時に、違うように進んだり。

 だからこそ、一緒にいられたんだと、私は思っていますが


 さて、時系列に関して、唐突に世界崩壊が生じたりと、そこらは初出の作品に準拠しているのですが、朝霧芽衣を主体とした場合、本当に突拍子もなくそれが発生したように感じられたかと思います。

 ただ、これは書きたいと思っていて、まだ書けるかどうかは明言できませんが、鷺城鷺花が見ているものになっています。

 朝霧芽衣は、人として人の世界で生きていたのなら、鷺城鷺花は人として、人の世界に挑むような生き方だったのは確かです。挑むというか、知り過ぎたが故に話せなくなり、その崩壊が発生する時のために、生きていた――という部分。

 まあいずれ、書けたらなと思います。


 正直に言えば、朝霧芽衣は鷺城鷺花に殺されて終わると、そう思っていた。

 鷺城鷺花にとってはそれが手向けだったろうし、うすうすは、それを芽衣が望んでいたと気付いていたのかもしれない。だから、その一線を越えた時、死を拒絶した時は鷺花も――私も、驚いたはずだ。

 けれど、拒絶した結果が出たのなら、その理由を推測するのは簡単だった。

 やはり弟子の存在だ。

 芽衣はジーニアスを早くに亡くし、一人立ちが早かった。芽衣は充分な時間をかけて弟子である美海を育成して、一人前だと認めたけれど――そこから、一人前と言われてから、芽衣にとっては始まりだったのならば、これから始まる美海を残してしまうのは、あまりにも不義理で。

 きっと、悲しいことだと、気付いたはず。

 作品内では明記されてませんが、たぶん60~70までは生きたはずです。たぶんそんなもん。今までの生活を考えれば、それ以上は無理だろうなと。


 ともあれ、これにて朝霧芽衣の一生は終わります。

 明るい人物とは思いませんでしたが、暗い人物ではなく、まあ無茶苦茶な女だと思うのですが、それはそれでバランスを保ってる。

 個人的には、なんでも〝上手くやる〟人物だという念頭でした。でもあの嫌味はどうかと思う。なんでこんな性格悪くなっちゃったの、この子。

 お陰で、私が書く作品のあちこちで名前が出たり、顔が出たりするんですけどね。


 長くなりましたが、ご愛読いただき、お付き合いいただき、ありがとうございました。

 人の一生なんて、終わるまで何が起きるか、わからないものですね。

 きっと朝霧芽衣は、師匠に対し、弟子の自慢をまずするんだろうなあ……。

 ――雨天紅雨。



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